『投資家は何を目安にして投資信託を選んでいるのか』( 山本 喜則、2014)
この本は 「他人の説明を鵜呑みにしないで 疑問を持つ」という視点から、
通常必要とされている指標を
「本当に必要なのか」という立場で諭じています。
〈一部抜粋・要約〉
第1部後篇 様々な指標とその活用
トータルリターンはどうやって求める?
グラフでわかるの?
モーニングスターによる各投信の 詳細説明には 必ずトータルリターンという項目がある 。
これは価格の増減に分配金や利払いを加えたものを、 投資コスト( 購入金額)で割って求めた値で、 一般に%で表示される。
さて、問題は毎月記載されているこのトータルリターンなる値が本当に役に立つのだろうかということである 。
各投資信託には原則、直近の前月末までの計算結果が載っている。
つまり月が変わればトータルリターンの値も変わる。
通常の株式投資と同じで、安い時に買って高い時に売るという原則は、投資信託でも変わりないと言える 。
トータルリターンの値がどうなるかは多分にその時の経済状況による。
これにはその時の 政治状況も関係してくる 。したがって あくまでも一つの目安と考えるべきだろう。
色々な時期のパターンの良し悪しを見たければ 、チャートを丹念に見て比較すれば良いのである。
表示されている標準偏差はどう判断するか
トータルリターンと同様その投資の説明する指標として必ず標準偏差が載っている。
投信の場合、
この値の大きい小さいはどう解釈すればよいだろうか。
標準偏差は、 トータルでどれだけ変動したかを表すのではなく 、いわば毎回の変動の激しさを表している 。
言い換えると標準偏差が小さいからと言って 、長い期間に下がり続けないとは限らないのである。
少し長い期間のチャートを よく調べて判断すべきだ。
レーディング&リスクメジャー
モーニングスターはそれぞれの投資信託にレーディングとリスクメジャーという、 リターンについての
ある種のレベル値を算出し ★印を付けてHP上に 掲示している。つまりある種の格付けである。
レーディング
レーディングは運用期間が 3年以上のファンドに行われる。
3年、5年、10年のレーティングがあり、 それぞれ3年、5年、10年間のトータルリターンに基づき、
一定の荷重平均式を用いて 3年総合 レーディング、5年総合レーディング、10年総合レーディングを算出・掲示している。
ラフな言い方をするならば 、レーティング値は、似た者同士のファンドの中で 当該ファンドの成績が 、
平均的成績に対してどの辺りに位置するかを示している。
リスクメジャー
当該の投信の標準偏差が 、モーニングスターが対象とする全ファンドの中で どの位置にあるかを示した値とされる。
1(リスクは最も低い)から 5(リスクは最も高い)の5段階表示をした値で示される 。
過去3年間、 5年間、10年間の
各評価期間で算出した値を 一定の荷重平均式に代入して算出する。
例えば リスクメジャーが1であれば 全ての投信の中で 標準偏差が最も小さいグループ に属することになる。
つまり 変化が小さい投信ということで 、まあ安全な投信とみる投資家も多いと思われる。
この後意外に健闘?、シャープレシオ
シャープレシオは計算問題にしやすいためか いくつかの証券会社のホームページに計算問題が見られる 。
参考として類似問題を掲載する。
(例)無担保コールレートが0.1%のとき
投信(A) トータルリターンは 10.1% 標準偏差(リスク)は10%
投信(B) トータルリターンは19.1% 標準偏差が20%
トータルリターンのみ見ると B がよく稼いでいるように見えるが 、リスクを加味してシャープレシオを算出すると、 投信 A の方が値が大きい 。
シャープレシオで比較すると 投信 A の方が良いファンドだということになる。
レーティング・リスクメジャーなどは投資家に利用されているか
さて、これら重要とされている指標が 投資家にどれだけ活用されているかを調べてみよう 。
普通に考えれば 「レーティングの値が高く、 リスクメジャーの値が小さい投信は、 トータルリターンが高く
基準価格の変動が小さいから良い投信である 」ということになりそうである。
当然販売側はこうした投信を勧めるだろうことは容易に想像できる。
ある投信に流入する 資金が多いということは 、その投信がその時期 、多くの投資家に支持されていることを示している。
レーティング と資金流入額の相関係数 、リスクメジャーと資金流入額 、さらにシャープレシオと資金流入額の相関関係を EXCELで求める。
この結果からみると 、シャープレシオは色々な指標の中では 結構意味のある指標と言えそうである。
投資家は何をチェックしているのか
投資家は 何に着目して投資しているのか相関関係数で 再考する
…と続きます。EXCELなどで、自分で検証したい人には、「おすすめ」ではないでしょうか。(^-^) チキハには難しいですが。