ユタカ2イキルオテツダイ

ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

1話 金ちゃんの性格

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ここで金ちゃんの性格を書いてみようと思います。金ちゃんの性格や、行動がこの物語にどのような影響を与えたのかは、読者のみなさんの判断にゆだねます。

金ちゃんは小さい頃から、やや体が弱く、ぜん息気味でした。ですから学校を休むことは多くて、

少し無理をして行けばその後、数日間は寝込んでしまう、ということを繰り返していました。

小さいころからゲームが好きで、成長に合わせるかのように次々と新しいタイプのゲームが発売されて、

父親がやりたいだけやらせろ、という方針でしたので思う存分好きなだけやっていました。

一人っ子でしたから、時間はたっぷりあります。

そうして、将来プログラマーになりたいと思うようになったのも、当然の流れのようでした。

だからといって、友達がいないわけではありません。年上の子たちと団地中を走り回って「けいどろ」をして大人に怒られたりすることもありました。

 

中学では、美術部に入り、色鉛筆を使って、とてもやわらかい色彩で絵を描いていました。

 

大人しく、背も小さく、やせ気味で、体力のない金ちゃんでしたが、高校の進路を決めるときに、思い切った行動に出ました。

なんと、県立の、昔で言う地域1番の進学校に行くと言うのです。

それまでの成績は、4に3がいくつか混じるほどですから、内申が合格ラインには届きません。

学校の先生に聞くと、半分は5がないと入るのは難しい、と言われました。

なぜ、その高校を選んだのかを作文に金ちゃんは「挑戦したい」とその理由を書いています。

中3の夏休みから、明光義塾に通い始めます。

夏休みが終わりに近くなっても学校の宿題がいくつも残っています。朝から1日中しかも新しい環境での勉強でへとへとで、余裕がありません。

最後のテストも、あれだけ勉強したのに、あいにくの結果でした。提出物でも点数を稼ぐことは出来ませんでした。

それでも金ちゃんはあきらめずに、塾に通い続けました。

 

秋になって、いよいよ進路を決めなくてはなりません。模試の判定はずっとDです。

先生に

「今の成績では、1つ下の高校レベルです。第1志望を変えないのであれば、行ってもいいと思える私立を選んでおいてください」と言われました。

行ってもいい私立、とは第1志望の県立に落ちて、滑り止めの私立に行く可能性が高いことを意味していました。

金ちゃんは、少し笑みを浮かべて「はい」と答えていました。

 

私は、それまでに何度か他の学校でも良いのじゃないか、と勧めていたのです。

しかし金ちゃんの意志は変わりませんでした。

塾の面接でもいつもと同じように、意見を聞かれても、たいがいは答えられずに黙っていまうか、長い沈黙の後にやっと一言二言う感じでした。

それでも、随分ましになったのです。

そばで見ていた母親はいつももどかしく「ちゃんと、言葉に出来るようにした方かいいですよ」と言って、返答を待ちますが、金ちゃんは口を閉じたままです。

そんな金ちゃんを見ていた塾長は以前「ひたむき」であると言っていました。なんとなくの意味は分かるのですが辞書で調べてみますと

(1つの物事だけに心を向けているさま─goo国語辞典)とありました。

 

そして、第1志望を変えるつもりはないのかと問われた時も「はい」とほほをうっすら赤くして言いました。

金ちゃんは〈これからいよいよ、自分の本気を試す時が来たのだ〉と、心が沸き立っているのです。

私は、観念して金ちゃんの横顔を見ていました。

そんな様子を見てか、塾長は明るい声で「本人の意思ですから、行きます。さあ頑張りましょう」と言いました。

塾長が「行きます」って、なんか変だなと思いました。

 

 

 

4月、希望した学校に入ることが出来ました。合格者平均より20点も少なかったのですから運が良かったのでしょう。

金ちゃんは、勝ち取った勝利に満足そうでした。

 

金ちゃんには苦手なことがあります。小学校では、スキップや、逆上り、フォークダンス。中学ではダンスの授業などでした。

あとは、弁当を食べるのが異常に遅いのです。葉っぱを日に3枚食べて、じっとしているナマケモノ、に親しみを覚えているようです。

そんな金ちゃんが、テニス部に入ると言います。なぜテニスなのか聞くと、「体力作り、楽しそうで楽そうだったから」と答えていました。

 

テニス部の初日、校庭を走った金ちゃんは、3周遅れでゴールでした。それでも、金ちゃんは、気にする様子もなかったのです。

私は<金ちゃんすごいな>と思いました。

しかし皆を待たせてはいなかったか、気になっていました。

 

しばらくしてAチームとBチームに分かれました。Aチームはうまい人たちで、コートを使用する回数が多いのです。

金ちゃんは、Bチームで、少ずつ不満を言い出します。

 

体育祭ではダンスが見せ場でしたが、先輩(女子)からやる気が見えない、という理由で1人だけ残されていました。

もともとダンスが苦手もあって、覚えも悪いのです。

合唱コンクールの練習でも、不満だらけです。やる気が見えないので、またもや女子に注意されるのです。

 

それに、忘れ物をしてくる生徒もいないようです。中学まで周りにいた、ちょっとだらしがなくて、いい加減、

色々な事で自分よりも出来ない人たち、はいませんでした。その学校には、気力、活力の優れたすごい人たちが集まっていたのです。

金ちゃんはそんな中で、頑張っていたのです。

 

そして事件は起きたのです。