ユタカ2イキルオテツダイ

ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

23話 体育教師のその後

    

4月1日

 

先日、「犬山被害者の会」の会合があり(笑)、坂本さんと佐藤さんと「いしがまや」でハンバーグを食べながら会うことになりました。

二人とも前回あった時と変わらない様子でしたので、ほっとしました。坂本君は、無事大学に受かり、佐藤君は浪人ということまではLINEで知っていました。

 

「腰大丈夫でしたか」

 

私は、佐藤さんに真っ先に聞きました。

 

「それが、痛い痛いって、1月はほとんど学校に行けなく。校長先生もできるだけのことはしてくれたんだけど。

卒業式には間に合わなくて、3月中に補習をして、やっと卒業できたんですよ」

 

「えっ、卒業式出れなかったんですか」

 

「ええ、本人もそんなに気負ってなかったんですけど」

 

「そうだったんですか。今はどうなんですか」

 

「今はもうだいぶ良くて、ある動きをしたりすれば痛いようですけど」

 

「そうですか」

 

坂本さんを見ると、何か複雑な顔をしています。その経緯は知っていた様子です。話が進んでいくうちにわかったのは、

今年は、予備校でも予測不可能なほどA判定の人が落ちていたという中で、坂本君は、E判定

からの合格を勝ち取っていたのです。「なんか、あまり言いたくなくて」と申し訳なさそうに言っていました。

 

そのあとも、予備校の話や、雄介君のいく理系大学の留年率が3割だとか、子供の兄弟の話や、仕事の話なんかをして、

あっという間に3時間ほど話し込んでいました。又会いましょうと坂本さんが言って、別れました。

坂本さんが何か複雑な表情をしていましたので、考えてみましたら、責任感という言葉がぴったりかな、と思いました。

 

その次の日、佐藤さんからラインが来ました。こんな内容でした。

 

「新聞見ましたか、犬山先生○○○高校ですね。偏差値調べてしまいました.ザマーミロと思ってガッツポーズしてしまいました」

 

犬山先生の異動先です。偏差値は20も低く、場所も遠いところです。わたしもこんなメッセージを送りました。

 

「wikiで調べてしまいました。わ、笑いをこらえても,か、顔が`~」

 

そして、金ちゃんのLINEです。

 

「面白い学校だね、入学試験はなくて、意欲があれば入れるという。

風紀も若干乱れ気味で、校則も厳しいらしいから彼にはいいんじゃないすか」

 

それを受けて佐藤さん。

 

「本当に!!!港北高校みたいにはいかないよ!っていう感じですよね!鍛えてもらいなさい、と思っています」

 

坂本さんは、

 

「校長先生、やりました!」

 

ふぅふぅふぅ、とか、やったやったやったとか、ありがとうございます、とか、感謝とかスタンプがついて。

佐藤さんはお上品だから、悪く言うことに抵抗がありそうですけど、坂本さんは正義感の強さで、

すっきりした様子でしたし、子供たちには、正義が行われることに希望を見たのではないでしょうか。

見ていると、性格の悪い人って、どこかで足をすくわれている。ですから、復讐は神様にまかせて、

私たちは安心して生きていこうと思うのでした。