2人は同じような紺色のスーツを着ている。細身でやや背は高い。
Aは 突然言い出した。
「お前のせいで俺の人生は台無しだ」
Bは反射的にこう応えた。
「それはいったい何を意味しているんだい」
「お前がチクったせいで 、あの女 俺から離れて行ったんじゃないか 。うまくいってた 、最高にいい女だった。
まったく俺の人生にとっては ありえないほど。
それなのに お前が 俺の裏の顔 を。全てが台無しだ。どうしてくれるんだ」
「何を言ってるのかさっぱり分からないな。 大体俺がお前の何を知ってるって言うんだよ」
「幼馴染だろう。俺のやってきたことは全て知っているはずだ」
「さあそれはどうかな」
「とぼけるなよ。 お前だって 共犯だろ」
「あーそうかな。 そうとは言えない 。俺はただ黙って見ていただけだから」
「そうやってお前はいつだって手を汚さずに 楽しんでいるんだよ。 お前が一番 悪党だよ」
「まあ難しい話はいいからさ。 一緒に飯でも食いに行こうか」
「ごめんだな。 友達ヅラをして 人のやっていることを 見て楽しんで、 陰で俺のことを 悪く言っているなんてさ。そんな奴とはもう付き合えない」
「そういうなって」
「とにかくもう俺の人生は台無しだ。 夢もないし、 希望もない。なんで生きてるかって 。唯一希望を与えてくれた あの女が 俺の裏の顔を知って 逃げていった。
俺はもう、どん底だ」
「お前に希望を与えてやろうか」
「聞きたくたくないな」
「まず、俺から離れることだ」
「……」
「そして、ここから 離れろ。 とにかく 違う場所へ行って やり直すことだね 。それが 俺からの 助言だな」
「 どこ行ったって同じだ。俺は、俺からは逃げられない」
「さあそれはどうかな やってみないと分からないじゃないか。
どうせ今のままだって死んだようなもんだ。 死んだと思って 変わってみろよ」
2人は双子のようによく似ていた。髪型も服装も物腰も。