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ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

人々が幅広く繁栄を分かち合うように設計された市場か

 『最後の資本主義』(ロバート・B・ライシュ、訳 雨宮寛/今井章子、2016) 

1950年代から60年代にかけてのアメリカで、子供時代を過ごした筆者は貧しいと感じたことは一度もなかったという。

ところが今は一部のエリートだけが裕福になり格差は広がるばかりだ。

人々は自由市場か問題なのかという議論になる、しかし根本的な原因はそこではない。

以前、中間層やその労働者たちは権力に対抗する勢力であったが、今やその力は弱い。

人々は今までも制度を変更させてきた。

奴隷制度を廃止し独占禁止法を作ってきた。

今、一部の人間だけが利益を集めるような仕組みに対してルールの変更を迫る事は私たちにできるはずだ。

そのためには団結することが必要だ。

 

<以下一部抜粋・要約>

 

国家や政府は人間が作ったものであり、法律も企業もそして野球だって人間が作ったものだ。

同じように市場も人間の産物である。

私的所有、独占への制限、契約、不履行に対処するための破産などの手段、ルールの執行といった事柄は、いかなる市場にも必須の構成要素だ。

資本主義と自由企業体制にはこれらが必要なのだ。

だがこの要素のひとつひとつを、多くの人々ではなく、一握りの人々を利するように捻じ曲げることも可能である。

すでに見てきたように、これら五つの要素はいずれも、国会議員や官庁の長や裁判官による広範に及ぶ各種の決定によって機能する。

彼らは社会事情が変化したり技術が進歩したり、新たな問題が起こったりして、従来の解決策が流行おくれになると、決まりを変えていく。

このことは政府の大小や政府の介入とは全く関係がないし、政府がどれぐらい課税し、どれだけ支出するかと言うことも無縁だ。

 

政府の相対的な規模とは関係なしに、立法府も行政も裁判所も決断しなければならないのだ。

では何がその決断を導くのだろう。

「公益」という抽象的な概念は役に立たない。何が公益かについてのコンセンサスがないことが多いからだ。

理想的なのは、そのような決断が人々の大半の価値観と意思に応え、民主的に決定権を付与された人々による「最善の判断」を反映したものであることだ。

しかしここ数十年、実際の決断は、大企業や大銀行や、自分の主張を聞かせるための十分な資産を持った個人資産形からの偏った影響を受け、密室で行われている。彼らの資金は、ロビイスト、選挙資金、PR活動、専門家や研究者の軍団、弁護士部隊、将来の転職先の密約に使われる。

こうして物事を取り決めるメカニズムが悪循環を生み出し、自律的にそれを持続させてしまう。

経済的支配力が、政治的権力を増大させ、政治的権力がさらに経済的支配力を拡大させる。 

 

本質的な問題は経済ではなく政治にある。経済システムの基本ルールが経済エリートの支配下にある状況では、その支配力の背後にある政治的権力の所在を変えることなしに改革を行う事はできない。

 

今後数年のうちに、米国政治をニ分する境界線が「民主党か共和党か」から「反体制派か体制指示派」へとシフトする可能性が高い。

つまり、ゲームがイカサマであると考える中間層、労働者層、貧困層と、イカサマを行っている大企業の幹部、ウォール街の住人、億万長者と言う対立軸だ。

 

新しいルール

 

私の言いたい事は読者に伝わったことを願うが、未来を楽観できる理由はたくさんある。

私たちは生活を大幅に向上させる発明やイノベーションの波の先端にいる。

すでに米国や他の先進国で進行しているように、そうした発明やイノベーションが数え切れないほどの雇用を奪い、大多数の人々の賃金を引き下げることになるが、私たちは利益を幅広く分かち合えるよう資本主義を再構築する能力がある。

 

市場とは人間が作り上げたものであり、人間が自ら策定したルールに基づいている。

ここで重要なのは、そうしたルールを誰がどのように目的で作り上げているのかと言うことだ。

この30年間、ルールを作ってきたのは大企業やウォール街やきわめて富裕な個人資産家らであり、彼らの目的は国全体の所得と富の大部分を自分たちの手中に収めることだった。

 

将来を決定づける議論は政府の規模に関する議論ではなく、政府が誰のためにあるのかと言う議論だ。

「自由市場」か「政府」かという選択が重要なのではなく、人々が幅広く繁栄を分かち合うように設計された市場か、ほぼ全ての利益が頂点にいる限られた人々に集中するように設計された市場かと言う選択が重要なのだ。

 

私(チキハ)の感想です。

この本はアメリカについて書かれています。

日本はここに書かれているほど、ひどいことになっていないと訳者は言います。

トランプ前?大統領が新しい党を創る噂が数ヶ月前に流れたことがありました。

世界の経済の中心地であるアメリカが大きく舵を切れば、日本も世界も大きく変わるのだろうと思います。

数々の科学的進歩によってなくなる職業というのが、かなり高度な専門職にまで及ぶことが書かれています。

安易なばらまきによってごまかされることなく、人々が幅広く繁栄を分かち合えるのかといった議論が始まるところを見たいですし、私もその意識で社会に参加したいと思いました。

最後の資本主義

最後の資本主義