『孫子がわかれば、中国がわかる』(杉之尾宜生/西田陽一、2013)
島国で生まれ育った日本人は、海外の常識を知らないと思いました。
中国は何千年もの間、権力者たちの闘争が繰り広げられているという話を聞きます。
『孫子』が孫武によって書かれたのはおよそ2500年前です。
中国軍や、意識の高い人はいまでも、学んでいるということです。
アメリカ陸軍トップエリートの必読書でもあります。
「戦わずして勝つ」と聞いたことがあります。
一般的な日本人ならば、平和的にことをすすめる、といったように考えそうです。
『孫子』では、謀略や外交や世論操作といった意味合いです。
うまくいかないときは最終的に武力に出る、とあくまでも好戦的なものです。
その兵法書の最初では次のように述べています。
「戦争行為の本質は、敵を欺くことにある。」
この本は中国人と仕事をして、困難な思いをした人、これから仕事をしようとする指導者や中間管理職のビジネスパーソンに向けて書かれています。
*は、私です。
<以下一部抜粋・要約>
*この本における肉食系と草食系の定義
「肉食系男子(女子)」とは自分が手に入れたいと望むものは、実力を持って手に入れるために戦いも辞さないことを自らのルールとしている者達です。
障害が立ちはだかればそれを乗り越える努力を行い、ときに自分よりも強い者にも挑んでいきます。
一方の「草食系男子(女子)」とは自分の手に入れたいモノは追求するが、他人との協力協調関係を壊さない程度に保つ事を望み、そのコミュニティ全体での立場を常に考え行動する人たちです。
その定義にそのまま乗っかり日本の内外のビジネス環境を表現すれば、日本以外の外国のビジネス環境は「肉食系」のルールが大半です。
世界というジャングルの中にいて、サバイバルしていくために獲物を追いかけていかなくてはならないビジネスパーソンが、「肉食系」「草食系」のどちらがいいかという議論は、ここでは展開しません。
ただ本書の関心は、「肉食系」のルールに生きる人々に対して、長らく「草食系」のルールに親しんだ人がどのようにして戦っていけば、サバイバルしていくことができるかというところに重点を置きます。
中国は古代以来、徹底した「肉食系」社会です。そこで生き抜くために『孫子』という兵法がどれだけ実践的に役に立っているかを説いていきたいと思います。
「肉食系」中国人の考え方
中華人民共和国の建国の「英雄」でもあった毛沢東は、無理な共産化を進めようとして失敗を重ね、その権力を完全に失って失脚する可能性がありました。
あわてた毛沢東は、表向きの看板では「間違った中国の資本主義化を防止するため」という目的を掲げて、ライバルであった劉少奇とその側近たちを権力中枢から引きずり下ろすために闘争をしかけ、その駒として毛沢東に心酔していた学生たちを「紅衛兵」にして自分の手足に仕立て上げました。
1966年〜68年を中心に、表向きは「間違った資本主義」の「内部告発」ともいえた文化大革命は中国全土に波及しました。
文化大革命は極端な例ですが、「内部告発」は権力闘争の道具であり、その道具を使うための大義名分を何かしらこじつけてくるというのは、「肉食系」のルールで運用されている中国社会の常套手段です。
メディア等では「尖閣問題」を取り上げる際には、中国に明確な強い国家意思があるという前提で、「尖閣問題」を取り上げて今後の動向を占うかのような議論がされたりもします。
本来は中国にはたして、統一した国家意思というものが十分にあるかということが、そもそも議論されなくてはなりません。
権力闘争の道具として使われる「尖閣問題」
指導者同士の暗闘は常に続いており、その派閥同士の暗闘の道具として「尖閣問題」が用いられています。
国家主席、総書記、中央軍事委員会主席の3主席を牽引する習近平の影響力を削ぎたいと考える派閥は、彼が政治や経済を含む対日問題で何か中国にとって不利なうちに外交で妥協する素振りを見せようものなら、国益を損なうものであるとして弱腰ぶりを陰に陽に責め立てます。
そして、まとまりかけていた話を潰し日中間の緊張をエスカレートさせるため、例えば「尖閣問題」を使います。
私(チキハ)の感想です。
孫武が職を得るために呉の王の前で、命令に従わない者(王の寵姫)の首を切り落として見せたことは有名なエピソードです。
中国の権力者が自分を逃してくれた恩人を、密告するかもしれないと、殺害して生き延びる話など聞いたことがあります。
ひとたび戦争となれば、情や倫理観は邪魔になると『孫子』は説きます。
中国は戦闘態勢を崩せないようです。
中国共産党建国100周年が3月に行われました。
党内の権力争いだけでなく、共産党VS一般国民という戦いの構図があります。
格差が激しいために貧しい人たちが暴動を起こします。
その数は数万、数十万ともいわれます。
会社の中間管理職が現地で中国人と仕事をする中で、内部告発を受けたとします。
そのまま上司、本社などに報告するのは正しくないと著者は語ります。
内部告発は、グロテスクな権力闘争が本格化すること、と考えます。
皆さんピンと来ますか?
そしてその内部告発をしてきた人をスパイとして擁するというのです!
有能なスパイを持つ者が勝つといいます。
相手のルールを知らなければ、巻き込まれて終わりそうです。
勝つため生き残るためにだましあうルール…、だまさないルールの人は知っておきたいことです。