『グレート・リセット』(クラウス・シュワブ テイユリ・マルレ 訳藤田直美 チャールズ清水 安納令奈、2020)
このように書いてあります。
コロナ危機によって私たちの失敗があらわになり、断層の存在が明らかになった。
私たちは否応なく、失敗したアイディア、制度、手続きやルールを、現在やこれからのニーズに合わせて早急に刷新しなければならない。
これが、グレート・リセットの大原則だ。
<以下一部抜粋・要約>
経済のリセット
成長と雇用
2020年3月まで、世界経済がこれほど唐突かつ乱暴に止まったことはなかった。
今生きている人の中で、質的にもスピード的にもこれほど劇的で極端な経済の崩壊を経験したものは誰もいない。
新型コロナウイルス感染症は供給と需要の両方を麻痺させ、世界経済は過去百年で最大の落ち込みを見せた。
将来の成長予想図
現時点の予想では、ポストコロナ時代の経済成長率は、過去数十年に比べてかなり低い水準にとどまり、それが「ニューノーマル(新常態)」経済の特徴になりそうだ。
2020年5月、この流れを象徴するマニフェストが発表されている。
「世界を計画的でありながらも、その時々の状況に適応しながら、持続可能な方法で公平にスケールダウンしていき、少ないモノでより豊かに暮らせる未来」を民主的に切り開いていくことを提唱している。
大きな政府の復活
過去500年の間に欧米諸国が得た大きな1つの大きな教訓の1つに、重大な危機は国家の権力を拡大させるというのがある。
これは常にそうであったのだから、今回のパンデミックが例外だとする理由がない。
今後、政府は、世界の利益にとってベストであるとして、程度の差こそあれ、ゲームのルールを1部書き換え、政府の役割を恒久的に拡大させようとするだろう。
政府社会のセーフティネットを強化する必要がある。
特に「市場志向」が最も強いアングロ・サクソン社会でそれが必要だ。
株主価値が二義的なものになり、ステークホルダー資本主義が優位となる。
過去にあれだけの世界経済を牽引してきた金融の流れも、おそらく後退するだろう。
国や文化の違いによって、政府の介入は緩やかなものにも有害なものにもなり得るだろうが、社会契約の再定義の方がより勢いがあるだろう。
社会契約
新しい社会契約はどのような形になるのだろうか。
- 万人共通とまではいかなくとも、より広範に、社会扶助、社会保健、医療及び基本的かつ高品質のサービスを提供すること
- 労働者や現在最も弱い立場に置かれている人々をより手厚く保護すること
地政学的リセット
これまで、アメリカが世界の大国として提供してきた国際的公共財(シーレーンや国際テロリズムとの戦い)に頼ってきた国は、自分の裏庭は自分の手で管理しなければならない。
21世紀は絶対的な覇権国がいない時代になりそうだ。
そこでは1つの大国は圧倒的な支配力を得られず、その結果、パワーと影響力、無秩序に時には渋々と再分配されることになるだろう。
テクノロジーのリセット
企業
どういう形であれ、ソーシャルディスタンシング、フィジカルディスタンシングは、パンデミックそのものが下火になっても続くだろう。
そのため、様々な業界で多くの企業は、オートメーション化を急ピッチで進める決断を下している。
接触確認、接触追跡と監視
接触確認と接触追跡はしたがって、新型コロナウィルス感染症に対応するために公衆衛生上欠かせないものだ。
コロナ危機が沈静化し、人々が職場に戻り始めたら、企業は従業員に対する監視を強化する方向に軸足を移すだろう。
ディストピアのリスク
この状況においては、デジタル体験はどれも、人々の体験を監視し、予測するための「製品」に変わり得る。
未来がディストピア(ユートピアと正反対の社会になるというリスク)は、この発想から生まれた。
人間らしさの見直し
消費
今後の姿勢については、日本を始め、一部の国々から学べるかもしれない。
エコノミストはしきりに、世界経済が今後、日本化(ジャパニフィケーション)することを懸念する。
しかしそれ以上に、消費に関して今後どうあるべきかを考えるヒントとなる、明るい日本化のシナリオもたくさんある。
日本の特徴は2つあり、その2つは密接に絡み合っている。
一つは、日本は豊かな国々の中でも社会格差が小さいこと。
もう一つは、1980年代の後半に投機バブルが崩壊して以来、派手な消費の割合が世界でもかなり突出して低いことだ。
現在では、(「こんまり」こと、近藤麻理恵による番組で広まった)厳選して少ないものを所有するメリット、一生をかけた人生の意義や目的(「生きがい」)探し、自然の大切さや森林浴の習慣などが、世界各国で真似されている。
こういったことは全て、消費主義的社会に比べ、もっと「質素な」日本的ライフスタイルを取り入れているにもかかわらず、認められているのだ。
北欧の国々でも似たような現象が見られ、派手な消費はばかにされるし、押さえつけられる。
だからといって、人々の幸福が奪われているわけではない。むしろ、その逆だ。
結論
格差の拡大、不公平感の蔓延、地政学的分団の申告が、政治の2極化、財政赤字の拡大や巨額の負債、グローバルガバナンスの機能不全あるいは機能停止、行き過ぎた金融化、地球環境の悪化、これらはパンデミックの前からある大きな問題の1部だ。すべての問題が、コロナ危機で悪化している。
社会や経済が抱える根深い問題に対処せず、解決せず放っておいたら、結局は、戦争や革命のような暴力的な出来事によって社会がリセットされる。
それは歴史の証明するところだ。
私たちには、勇気を持って難題に立ち向かう責任がある。
パンデミックは「社会を省み、考え直し、リセットするという、千歳一遇のチャンス」を与えてくれたのだ。
「志向性の共有」、つまり共通の目標に向けて一緒に行動することで、これがなければ、人類の進歩はまずない。
経済を再開するときに、より広範な社会的平等と持続可能性を織り込むチャンスがある。
私(チキハ)の感想です。
ここに書かれているのは大きな単位でいえば国家でその次に企業そして個人とそのどれもがリセットをする時期にあるということだと思います。
古くなって今の時代には合わなくなったものを刷新する、それも徐々にではなく短期間で一斉にという考え方です。
これまでのように利益追求・拝金主義ではなく、社会全体で相互に関わりを持つ人たちのことを考える。
地球のことを考えるというように方向転換します。
格差をなくし、弱者には社会保障の導入など挙げられています。
人に優しく地球に優しくという感じでしょうか。
そうなると本当にいいですね。
しかし、この本の中で書かれているような不安な要素、監視社会や極端な社会主義に傾倒する恐れもあります。
この本は「ダボス会議提示の内容」となっています。
ダボス会議は「世界フォーラム」が開催する、毎年1月に世界各国の首脳や経営者らが一堂に集まる世界会議です。
日本代表で理事を務めるのが竹中平蔵氏です。
面白い動画を見つけました(歴史未来ラボ「ダボス会議のグレートリセット計画の実態」)。
その動画の中で言いたいことは、一部の支配者層が考える持続可能で平和で安全な世界とは、監視社会であるということです。
人々には娯楽、快楽が与えられます。
しかし、すべてはAIによって監視され、反政府、反社会的なものは排除されます。
自由はその制限の中でのみになります。
洗練された知能と、経済力、政治力、彼らはそれを行なうでしょう。
それは彼らの正義です。
どうしてそのような流れになっているのでしょうか。
それは私たちが世界全体のことを考えてこなかったツケが回ってきたのだと言います。
では監視社会では無い生き方とはどういったものでしょうか。
それは個々人の精神性の向上にかかっています。
例えば差別をしない公平であるなど個人の内面にあるものです。
自分の出来ることをやって行くことが大切だと言います。
動画の中ではブッダの教えのようなものと言っています。
アメリカでは、21年9月にバイデン米大統領がワクチン義務化の拡大をしました。
ワクチンを打たない人には我慢の限界なんだそうですが、よく読むと労働者が対象で、政治家や経営者などは対象外のようです。
明確な意志を持ち、行動力のある人たち(パイロット、警察官、消防士、教師など)が大辞職しています。
どういった未来を望むのか、私たちはまだ自分で選べる国に住んでいます。
よく考えていきたいと思いました。