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海外大型M&A 大失敗の内幕【よく知らないで手を出すと痛い目を見る】

「海外大型M&A大失敗の内幕」(有森隆、2015)

この本は大企業の大型買収での失敗例を書いています。

日本人の伝統的な経営は企業を自分のもの、育てるもの、のように捉えますが、海外では企業を売るために起業するという発想があります。

欧米では企業は売買の対象なのです。

慣れない買収劇では赤子の手をひねるように、高値づかみ、関係者に金だけ巻き上げられるなど、決め技をバンバンかけられる様子が書かれています。

 

<以下一部抜粋・要約>

 

武田薬品工業

長谷川閑史は『日経ビジネス』のインタビューで、後継者育成に失敗したことを認めた。

2兆円の海外M&Aを実施したが、社内にはグローバル企業を運営できる人材がいなかった。

買収先の業績を好転させ、成長へつなげる道筋を描けない。

武田の多くの日本人幹部は、海外の拠点で勤務したことはあるが、世界規模で研究開発や営業を統括し、本当のグローバルリーダーとして揉まれた経験がほとんどなかった。

次期社長候補から生え抜きの日本人幹部を外した本当の理由がこれだった。

だから、外人部隊をスカウトし、経営陣や幹部の総入れ替えに近い大手術を行ったと説明している。

 

ブリヂストン

金で海外企業を買うことができる。

しかし、買った後に、その会社をうまく経営できるという保証は無い。

日本企業による海外M&Aは、ほとんどが失敗に終わっている。

 

日本流の謝罪がブリヂストンをクロに追い込む

2000年9月、米国議会会員は、欠陥タイヤに対するリコール問題で関係者を召喚。

初の公聴会を開いた。証言台に立ったフォードのナッサー社長は「すべての問題はタイヤにある」と断言した。

これに対してブリヂストンの本社の副社長であり、米国法人の社長兼CEOの小野正敏は「製造工程や品質管理など、あらゆる側面から徹底した調査を実施しているが、現時点では原因の解明には至っていない」と述べるにとどめた。

その上で「自分の務めは、事故で家族を亡くされた方に謝罪し、一連の問題に責任を持つこと」と明言した。

日本では、事故の犠牲者に謝罪するのが礼儀だが、「謝らない文化」の米国では、そうではない。

米国メディアは小野の発言を「品質問題に対する謝罪」と解釈し、非を認めたと大々的に報じた。

 

ソニー

「米国の魂を買った」とバッシングに遭う

名門コロンビア映画を6400億円で買収。

「こりゃ、大事になる。米企業が日本の国技の相撲を買収するのも同じことだ。反発は避けられない」

映画は米国文化の象徴といわれてきた。

欧州のような歴史と伝統を持たない米国では、全世界を席巻したハリウッド映画に強い思い入れを持つ人が少なくなかった。

ソニーによるコロンビア映画の買収は“聖地”に手を突っ込んだようなものだった。

 

三菱地所

ロックフェラー財団側からのオファー

ロックフェラー・センターは、米国ニューヨーク市ミッドタウンのマンハッタン5番街及びび6番街にある、超高層ビルを含む19棟のビル分からなる複合施設だ。

石油採掘で巨万の富を築いていた財閥の創始者であるジョン・D・ロックフェラーが、1929年の大恐慌のさなかに着工し、すべての建築物が完成したのは10年後の1939年だった。

この高層ビル群は、大恐慌の危機を乗り越えて再生を果たす米国経済の力を世界に見せつけた。

ロックフェラー財団の総帥はデイビッド・ロックフェラー。

チェース・マンハッタン銀行のトップを長く務めてきた務めた米政財界の大者である。

そんな世界の大富豪が、巨大財閥の輝かしい歴史と財力を物語るロックフェラー・センターを手放すのか?

日本でいえば、丸の内の大家と呼ばれる三菱地所が、丸の内のビル群を売却するようなものだ。

およそ考えられない。

米国の不動産業界が、ロックフェラーはうまく売り抜けたと評価した。

1930年代に建てられ、老朽化していて高い家賃収入が望めない、投資向きでないおんぼろビルを、三菱地所は高値で買ったと笑われていた。

 

私<チキハ>の感想です。

あとがきにこう書いてあります。

 

米国では、企業を作って売るビジネスが日常的に行われている。

日本のベンチャー企業の経営者が、この手法を取り入れるようになったのは、最近のこと。

半世紀も経っていない。

大半は、手塩にかけて育てた企業を得るのはけしからんことだと考えている。「売って儲ける」というM&Aの成功体験が、決定的に不足している。

このことが、中身はボロボロなのに、表面だけつくろい、厚化粧した会社を買わされてホゾを噛む根本的な原因になっている。

欧米のM&Aのルールを熟知していないと見抜かれ、被買収企業の経営者に舐められたり、仲介者やコンサルタント、はたまた新たに雇った経営幹部に法外な報酬だけを巻き上げられるケースが後を絶たない。

 

かなり厳しい意見です。

しかしこれが現状なのですね。

大企業のトップはいつもワールドカップをやっているようなもの、と過去納税日本一の斉藤一人さんが言っていたのを思い出します。

昔は日本のスポーツ選手が海外で活躍するのは、大変だった話を聞きます。

これからは経営でも、世界で活躍する人たちが出て来ることを期待したいです。