『岸田ビジョン』(岸田文雄、2021 )
<以下一部抜粋・要約>
総選挙でも申した挙げた通り、まずは「最悪の想定」をすることから、コロナ対策の全体像を明示し、国民おひとりおひとりが、今感染状況はどの地点にあって、どれくらい頑張れば出口に届くのか、イメージできるようにすることが非常に大切だと思っています。
経済政策についても同様です。
大胆な金融政策、機動的な財政政策、有効な成長戦略の三つを堅持していきますが、その前提として、「小泉政権以来の新自由主義からの脱却」を掲げています。
新しい日本型資本主義の構築を目指しているのです。
これまでは、あまりにも「成長」に重点が置かれすぎていました。
一部の企業が成長し、大きな利益をあげれば、そこから従業員や関係会社、そして関連業界にその利益が滴り落ちていく「トリクルダウン」が起こると言われていました。
しかし、20年が経過しても、トリクルダウンは起きなかったと言わざるをえません。
私は、この新自由主義からの転換を目指します。
成長と分配は、車の両輪です。
成長し、さらにそれを分配しなければ、好循環は生まれません。
新自由主義や株主資本主義が重視されるようになった結果、世界的に労働分配率が下がっています。
これを改め、労働者への大胆な分配を企業に促すとともに、医療・介護・保育など公的セクターの現場で働く方たちの所得を増やすよう公的価格についても見直していきます。
外交・安全保障の分野では、私以上に経験豊かな政治家はあまり見当たらないと自負しています。
私は「三つの覚悟」を柱とする外交・安全保障政策を組み立てています。
「民主主義を守り抜く」「我が国の平和と安定を守り抜く」「人類・未来への貢献し国際社会を主導する」と言う三つの覚悟の基盤になるのは、もちろん「信頼」です。
私の(チキハ)の感想です。
私が期待したのは具体的な経済政策やこれからの日本に対する(長短期的)ビジョン(未来像)でした。
しかし、出てくる文章は、よく使われる表現で、熱量を感じませんでした。
そんな思いを抱きながら後半の部分、岸田文雄さんの人物について語られる章を読みました。
印象に残ったのは、政治家という職業についてです。
岸田首相は、政治家三代目になります。
政治家になるには、政治家秘書を経てなるようです。
その様子は、芸人さんが師匠に弟子入りをして身の回りの世話をしながら芸を学んでいく、その環境での人付き合いなどもそこから学んでいくといった学び方と似ていると思いました。
そして時間が許す限り、ビールケースの上に立ち演説をして、人々に顔と名前を覚えてもらうといった地道な活動をしています。
まるで、営業する歌手のようではありませんか。
人々の印象に残るために、立ち振る舞いや声のトーン、リズムなどを実験をしながら磨いていく様は、まさにそういった職業の人と同じだと思いました。
その地道な活動の上で、人気を得た人が選挙に勝つのです。
自民党が世間の批判を浴びているとき、演説していてもヤジがとび罵倒されます。
それでも立ち続ける人が生き残ります。
東大を三浪し(縁がなかったとサバサバしていたというが)、早稲田法学部卒そんなエリートがなぜそうまでして、その職業にこだわるのかと不思議に思いました。
しかし、人それぞれ道があるのだ、と思いました。
派閥闘争などが書かれています。
そして本の最後には、「政治家として勝負をかけられた時は、絶対に負け戦をしてはだめだ」と締めくくられています。
そうだ、頑張れ。
政治家は、勝負に勝つことが使命なのだ?
その後も私はこの本の内容について思いを巡らせていました。
そして、どんなに良い政策を訴えたとしても、選挙に勝たなければ始まらないのだろう、と思いました。
しかし、どうしても頭に浮かんでしまうのは、芸能人のアイドル(AKB48)の、総選挙でした(2018年まで行われていた)。
きっとこの本は後援者(ファン)に配るものなのだと思いました。
日本は官僚が動かしているので、誰が政治家になっても大した違いは無いのだということを読んだことがあります。
これだけ選挙活動にエネルギーを注ぐのであれば、政策等にかけるエネルギーはそれほど多くは無いのではないかと思ってしまいました。
岸田さんは、「聞く男」と自分のことを評価しています。
落合陽一さんとの対談の中で、「デジタルを活用して誰一人取り残さない社会」と繰り返し言っていました。
これは、地元の人たちと膝を突き合わせて話を聞いた、その結果なのかも知れないと思いました。
しかし、まだしっくりきません。
『岸田ビジョン』には、具体策も、強い主張も無い。
「聞く男」はどう動くのかわからない。
私の中にはその印象なのです。
藤原直哉さんがトランプ前大統領の演説は初心者向けが3割、敵に向けて7割と言っているのを聞いて、ああそういうことなのだと思いました。
「勝負をかけられたら負け戦をしない」というメッセージは、敵に向けたものだ、とわかったからです。
難しいものですね。
私は政治のことはよくわかりません。
岸田内閣の山際大志郎経済再生大臣は「『新しい資本主義』は、株価を意識してはやりません」と明言しました。
株価で儲ける人ではなく、関係する人たち(労働者含め)に利益が回るようにするということでしょう。
本当に小泉、安倍、菅内閣(新自由主義)路線から脱却するつもりでしょうか。
今まで儲けてきた人を敵に回すということ?
何も知らない私がうっすらと感じるところは、乱世ということです。
以前記事にしましたが、歴史をみるとその循環があるようなのです。
まだ実感がありませんが、その方向へ向かっているのかも知れません。