『農業消滅』(鈴木宣弘、2021)
なぜ農家の暮らしが成り立たないのか、知りたかっただけなのに、大変なことになってしまった。
<以下一部抜粋・要約>
輸出規制は簡単に起こる
FAO (国連食糧農業機関)によれば、コロナ禍によって2020年3月から6月の段階で輸出規制を実施した国は19カ国にのぼったという。
2008年の食糧危機の背景には
アメリカは、自国の農業保護の制度は撤廃せずに、都合の良いように活用し、他国に「安く売ってあげるから非効率な農業はやめた方が良い」といって、世界の農産物貿易の自由化と農業保護の削減を進めてきた。
そして、安価な輸出を行うことで他国の農業を縮小させてきたのである。
それによって、基礎食料を作る生産国が減り、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの少数の農業大国に依存する市場構造になってしまった。
厳しい農村の実態
農家の1時間あたりの所得は平均で961円ととても低い。
農産物価格が安い(買い叩かれている)、つまり、農家の自家労働が買い叩かれていることになる。
なぜ、そんなに所得が低いのか。
その大きな要因は、自動車などの輸出のために農と食を差し出す貿易自由化が進められたことにある。
いっそうの買い叩きのための農協攻撃
日本で、政権と結びついた日米の「オトモダチ」企業の要求を実現する司令塔が「未来投資会議」(菅政権では「成長戦略会議」に再編)、実施の窓口が「規制改革推進会議」で、官邸の人事権の乱用による行政の一体化によって、国民の将来が1部の権力者の私腹を肥やすために私物化されつつある。
農協改革も、種子法廃止と民間への移譲も、種苗の自家採取の制限も、「遺伝子組み換えでない」の表示の実質的な廃止も、漁業権の強制的付け替えも、民有林・国有林の「盗伐」合法化も、卸売市場の民営化も、水道の民営化も、根っこは全て同じ、「オトモダチ」への便宜供与と見たほうがわかりやすい。
「今だけ、カネだけ、自分だけ」の「3だけ主義」の対極に位置するのが、命と暮らしを核にした共助・共生システムである。
逆に言えば、1部に利益が集中しないように相互扶助で小農・家族農業を含む農家や地域住民の利益・権利を守り、命・健康、資源・環境、暮らしを守る協同組合組織は、「3だけ主義」者には存在を否定すべき障害物なのである。
そこで、「既得権益」「岩盤規制」だと農協を攻撃し、「ドリルで壊して」仕事とお金を奪って、自らの既得権益にして、私服を肥やそうとするのだ。
例えば、アメリカ政府を後ろ盾にしたウォール街は、郵貯マネーに続き、農協の信用・共済マネーも喉から手が出るほど欲しいがために、農協「改革」の名目で信用・共済の分離を日本政府に迫る。
なぜ、自国民が食べないものを日本に送るのか
アメリカの穀物農家は、日本に送る小麦には、発がん性に加え、腸内細菌を殺してしまうことで、様々な疾患を誘発する懸念が指摘されているグリホサートを、雑草ではなく麦に直接散布している。
収穫時に雨に振られると小麦が発芽してしまうので、先に除草剤で刈らせて収穫するのだ。
農民連食品分析センターの検査によれば、日本で売られているほとんどの食パンからグリフォサートが検出されているが、当然ながら、国産や十勝産と書いてある食パンからは検出されていない。
日本を守る食と農林漁業の未来を築くには
真に強い農業とは何か。
果たして、規模を拡大してコストダウンすれば、真に強い農業になるのだろうか。
どうすればいいのか。
少々高いけれども、とても品質が良いので、あなたの作る農作物しか食べたくない、という人々を作ることが大切になる。
だからこそ生産者とそれを理解する消費者との絆、ネットワークこそが真に強い農業につながっていくのだと思う。
スイスの国産卵は1個60円から80円もする。
だが、輸入品の何倍したとしても、国産の卵の方がはるかに売れている。
筆者も現地で見てきた。
それを裏付けるような、象徴的なエピソードを聞いたことがある。
スイスのとある街で、小学生くらいにしか見えない女の子が一個80円もする卵を買っていたので、その理由を聞いたところ、その子は「これを買うことで生産者の皆さんの生活も支えられ、そのおかげで私たちの生活も成り立つのだから、高くても当たり前でしょう」と、いとも簡単に答えたのだという。
スイスで国産品が売れるキーワードは、ナチュラル、オーガニック、アニマル・ウェルフェア(動物福祉」、バイオダイバーシティー(生物多様性)、そして美しい景観である。
これらに配慮して生産すれば、できたものも安全でおいしいのは間違いない。
それらはつながっている。
それは高いのでなく、そこに込められた価値を皆で支えているのである。
私(チキハ)の感想です。
こんなに食物が汚染されているなんて知りませんでした。
日本では規制されている薬剤を、海外で使用したものに関しては、規制を緩めて輸入しているなど、知らなければいけないことが、たくさん書かれていました。
しかし、あまりに怖がりすぎて、汚いものを食べているという意識でいたら、体に悪そうだ、とも思います。
世界の基礎食糧は、いくつかの農業大国に握られているのですね。
政策の裏には、一部の企業と政権の利益があるとは、見えにくい側面だと思います。
私たちは、食糧が安く手に入るという恩恵にあずかっていたと思いますが、いいことだけではないことを知りました。
これからは、ここに書かれているような、事実を知ること、そして、自分の出来ることをやっていこうと思います。
株式会社アメリカの食糧戦略…第二の占領政策の実態と売国奴たちの正体(鈴木宣弘X三橋貴明) - YouTube