『エンジェル投資家』(ジェイソン・カラカニス、2018)
<以下一部抜粋・要約>
誰もこういう本を書かなかったので私が書くことにした
世界はますます少数の人間に支配される傾向にある。
力があって頭が切れる連中、つまりロボットを設計したりソフトウェアを書いたり、この本をタブレットで読んでいるなら、そのタブレットをつくれるような人間だ。
しかしだからといって、諦めて読むのをやめないでもらいたい。
100年前からのエリートたちイルミナティだかフリーメーソンだか富豪クラブだか知らないがーーそういう連中の座るテーブルに無一文から出発して割り込んでいく方法を私は知っているからだ。
私はテクノロジーとビジネスが交差する最前線に生きている。
誰も実現性を信じなかったプロジェクトに対して小切手を書くのがエンジェル投資家としての私の仕事だ。
これ以上スリルあるギャンブルは世界中探しても存在しないだろう。
今年は75万ドルをカフェXに投資した。
このスタートアップは簡単にいえばロボット・カフェだ。
スターバックスのビジネスモデルで最大のコスト要因は不動産賃貸と人件費だ。
カフェXが成功すれば、本格的なコーヒーの値段を2ドルに下げられる。
コンピューターは顧客の好みを決して忘れず、コーヒー豆の種類も泡の量も前回の注文とぴったり同じにして完璧なコーヒーを入れてくれる。
カフェXのようなイノベーションは同時に何百万という職を過去のものにしてしまう。
私のことを口のうまい儲け主義の自由市場タダ乗りの化け物やろうと思っているならーー半分だけ正しい。
私は、我々の子供たちにはもっと良い世界に住むべきだと考えている人道主義者でもある。
給料が低くて繰り返しばかりの肉体労働を排除していけば、人類はもっと有意義なことに時間を使う職を増やせる。
再生可能エネルギーと他の惑星の植民とかだ。
また世界の各地にまだ残っている独裁者を引退に追い込み、人殺しやレイプ、弱い者いじめなどの悪行を止めさせることに時間を使えるだろう。
「物事が変わる」というのはどういう意味だろう?
景気が回復し、職が保障され、食事が無料になって、いつでもウーバーのドライバーが行きたいところへ連れて行ってくれるようになる、ということだろう。
しかし私がこうした将来の可能性にかけるのは、職を失う人々のことを象牙の塔に立てこもって他人事として笑いたいからではない。
私がこの将来にかけるのはそれが不可避であり、そうした変化を加速させようとするスタートアップの創業者やイノベーターたちを手助けすべきだと考えるからだ。
創業者やイノベーターは決して金儲けのための傭兵ではない。
むしろ未来を広める伝道師だ。
ここまで読んできたのなら、おめでとう!
読者はいわば映画『マトリックス』に出てくる真実を知る赤い薬を飲み、世の中の真のありさまを理解する方向に一歩踏み出したわけだ。
その真実というのは、読者が生きている間に世界は一度ならず、数回にわたって根本的にひっくり返される運命にあるということだ。
私は最近ソフトウェア・エンジニアを不要にするテクノロジーに投資した。
このブラックボックスは「X. Y、Zという機能を持ったアプリをつくってくれ」と命じるとそれをつくってくれる。
「これこれ(ここに現在非常に使いづらいサービスの名前を入れる)についてウーバーみたいなアプリをつくってくれ」と命じればよい。
ちなみに、大金持ちの中にはワイオミング、ニュージーランドの僻地や離島に広大な地所を買い、今の世界の終わりに備えている人々がいる。
太陽光発電から自家用水道まで備え、一切を敷地内で自給自足できる要塞をつくっている。
いわゆる「プレッパーズ(世界の滅亡に備える人々)」だ。
思いがけないことが起きて壊滅的影響を与えるという「ブラックスワン」現象が我々の行く手に待ち受けている。
そういうことが起きたときに、単に生き延びるだけではなく、むしろそれをチャンスとして活用する方法を伝授しようというのがこの本のテーマだ。
私(チキハ)の感想です。
ギャンブルだと言い切っていて、いさぎいい。
場所はシリコンバレーしかないと言い切っていて、面白い。
スタートアップ(革新的なアイデアで短期的に成長する企業)がのぼりつめるまでのサクセスストーリーは、ロックスターのように人々を魅了する。
金融の民主化やテクノロジーの急激な進歩によって世界は、何度も転がる、確かにそういう波が起こりそうだと思った。
軽いタッチで書かれているものの、投資先を決定するのは、創業者を見極めること、という本質的なことだった。
これはーー奥が深い。