『データが語る日本財政の未来』(明石順平、2019)
<以下一部抜粋・要約>
国債とは何か
国債とはどういう法律に基づいて発行されているか
一般的に「国の借金1000兆円」と言われているのは、公債と政府短期証券、借入金のことだ。
まずは建設国債のことから説明するよ。
建設国債というのは、財政法第4条を根拠に発行される国債のことだ。
条文を見てみよう。
第4条国の歳出は、公債または借入金以外の歳入を持って、その財源としなければならない。
ただし、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
原則として借金をしてはいけない、ということ。
さて、次は特例国債だ。
この特例国債の根拠となる条文は財政法には存在しない。
建設国債は「公正の国民の役に立つ道路や建物に使われるから発行してよい」っていう建前があったけど特例国債はその年に必要なことに使われて、後世には何も残らない。
例えば、年金・医療費・介護費・生活保護費などの社会保障費に使われる。
民間の金融機関だけだとお金が回らないような分野にも、低い金利でお金が行き渡るようにするために、財投債がある。
例えば日本学生支援機構や、日本財政金融公庫や、福祉医療機構なんかがある。
そして最後に1つ、これが1番額が多いんだけど、国債の借り換えのために発行される借り換え債というものがある。
国債は、満期になっても全然満額を返せないから、借換債を発行してどんどん借り換えている。
国債の満期は、2年、5年、10年、20年、30年、40年などいろいろな種類のものが発行されている。
しかし、実は、買い替えを繰り返して60年で返し終わるようになっている。
米澤氏は、平成27年度末までの普通国債残高763兆円のうち、利息の支払いのせいで発生した借金が335兆円を占めていると分析している。
約44%が利息の支払いのためにした借金ということだ。
一般会計と特別会計
日本は1965年度以降、一度たりとも借金の残高を減らしたことがない。
日本の国債は日銀のおかげで値段を維持できている
金利が上がると、古い国債が新しい金利の借換債にどんどん入れ替わっていき、そのうち全部が新しい金利の国債になる。
例えば残高900兆円を前提に、全部の国債の金利が今より1%上がったとすると、9兆円も利払い費が増える。
2013年以降は日銀が現れて国債を爆買いするようになり、金利が無理やり低く抑えられるようになった。
日本の国債は日銀のおかげで値段を維持できている、まさに崖っぷちの状態だ。
経済成長率と国債発行額
落ちる経済成長率、増える国債発行額
まずはGDPについて説明しよう。
日本では「国内総生産」と訳される。
すごくざっくり言うと、この数字は日本国内で儲かったお金を全部合計したものだ。
原材料を100円で仕入れて、それを加工し、150円で売ったとしよう。
儲けは50円だ。
国内総生産とうのは、ざっくり言って、そういう「儲け」の部分を全部足したものと覚えておけばよい。
国内総生産は、経済規模を測るものとして最も重視される。
次に、実質値と名目値の違いについて説明しよう。
実質値は物価変動の影響を取り除いた数字、名目値は物価変動の影響を取り除かないそのまんまの数字だ。
例えば世の中の物価が10倍になれば、原材料費も10倍になるし、生活費も10倍になる。
このような物価変動を考慮しない、見たまんまの数字を名目値という。
他方、物価変動の影響を取り除いた値を実質値という。
経済の調子を見るには実質値が重要ということだ。
今、そこにある未来
雇用が増えたのは、賃金が低く生産性を上げにくい労働集約型産業
ここ5年で雇用が増えた業種の上位3種は、いずれも賃金が低い。
平均賃金は医療・福祉が12位で、卸売業・小売業が13位。
そして宿泊業・飲食サービス業は唯一20万円を切る最下位……。
この3種は人間の労働力による業務の割合が大きい「労働集約型産業」と言われるものだ。
これはたくさんの人が長く働く必要がある業種ということだから、当然生産性は上がりにくい。
より少ない時間と人でより多く儲けるということができない。
そのかわり、パートやアルバイト等の非正規雇用者はたくさん必要になるから、雇用者数は増えて、失業率や有効求人倍率の改善にはつながる。
今後は少ない現役世代で多くの高齢者を支えなければならないから、社会保険料も税金も上がっていくだろう。
他方で、近年増えているのは賃金の低い業種の雇用ばかりだから、大幅な賃金上昇も期待できない。
今のままだと日本経済が伸びる要素は全然ない。
溜まりすぎた借金をどうすればいいか
財政を立て直すには3つの手段がある。
①増税と緊縮②経済成長③極端なインフレだ。
本気で財政を再建し、将来にわたって持続可能な財政状態にするには、今まで後回しにしてきた分、極めて極端な増税が必要になるし、社会保険料も同様に引き上げていく必要がある。
今も特大の借金を背負っているが、将来はもっとたくさんお金がかかり、かつ負担者は減るからね。
まだ人口が多く、税金を負担する能力が高い今のうちに、増税して借金負担を軽くしておかなければ、将来資金繰りができなくなる。
他方で、支出も大きく削っていかなければならない。
別の選択肢を検討すると、経済成長はさっきも言った通り無理なので、後は極端なインフレしか残らない、ということになる。
しかし、これも問題なんだ。
極端なインフレになれば過去分の借金負担は軽くなるが、将来するであろう借金はインフレに合わせてどんどん膨らんでいくことになる。
極端な円安になってインフレになれば、社会保障費が全然追いつかなくなる。
医療も介護も年金支給も十分に受けられなくなっていく。
対応策は、過去の歴史から言えるのは、預金封鎖や通貨の切り替え、極端な増税と緊縮が行われたりするんじゃないかな。
通貨が崩壊すれば非常事態だから、そういうときに1回限りの特別な税は検討されてよいだろうね。
日本が太平洋戦争後に、預金封鎖・新円切り替えと一緒に実施した財産税もそういう特別なものだった。
保有財産の額に応じて、25〜90%の課税がされた。
この極端な税によって財産を没収され、多くの富裕層が没落していった。
1つ確実に言えるのは、「先送り」をしてはいけないということだ。
先送りはその場しのぎにしかならない。
後で必ず痛い目に合う。
今まで見てきた通り、日本は高齢化が進んでお金がたくさん必要な国になっている。
そのお金は誰かが税金や社会保険料という形で負担しなければならない。
いつまでも借金でごまかせるものではないんだ。
私(チキハ)の感想です。
よく聞く話ですが、高齢者の数は増え続け、労働人口は減少していきます。
労働集約型の産業は、生産性が上がらないので経済成長は望めない。
しかし悪いことばかりではない、と思います。
戦後の高度成長がもたらしたのは、物質的な豊かさと、敗戦からの名誉挽回で、失ったものは、私たちにはよくわからない。
私個人の感想ですが、大人たちは朝から夜まで会社にいて、それから飲みに行きました。
帰りのタクシー代は会社持ちです。
郊外から朝の満員電車で出勤します。
日本総出で家持ち車持ち核家族化で、放っておかれた子供達は、不良がカッコ良くて倫理とか道理みたいなのは、子供達の間にあるものしか知らない(この辺りチキハの感覚)。
笑いは乾いていて、虚しかった。
もう経済成長は期待しない。
必要ないと言う人もいます。
なぜなら、昔は家や車などの物質を買うためにお金は必要だったが、今は必要ないからです。
この本では、巨額の借金を理由に円が安くなり暴落する未来を想定しています。
清算しなければならない時が来ることは確かでしょう。
過去そうあったような、増税、緊縮財政、財産税、新札切替にともなう、何かしらの徴収を想定しておきたいです。
預金封鎖はないだろうと本書にはありました。
戦後一番被害が少なかったのは財産が極端に多くも少くもなかった人、と何かで読んだように思います。
ざいさんなくてよかったわ、みんな一緒じゃーん。
同時に新しい波がきて、それに乗った人たちがいたのだという話も聞きます。
次はどんな波が来るんだろう、そう考えると、大きな期待はしないけど、小さなわくわくを感じます。