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ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

そして、生き残るのは日本だけ!

『そして、生き残るのは日本だけ!』(増田悦佐、2013)

<以下一部抜粋・要約>

 

輸出は今では4割が円ベースになっている

今、日本の輸出製品のうちの4割は円ベースになっている。

つまり、4割は円安になっても、何の得もない。

その輸出に比べると、輸入では、日本は、世界中で最もいろいろな資源が不足している国だから、エネルギー資源や鉄、非鉄金属、さらには農産物等を買わなくてはならない。

そのために、円安になると、たちまち輸入価格が高くなる。

そして、支払いは、大体は相手国通貨か米ドルである。

円安になって、得をする方は輸出産業の6割であるが、損をする方は輸入品を買っている人たちの78%にものぼる。

 

日本の未来は前途洋々

経常収支こそ一刻の経済の健全度を測る試金石

いろいろ言われるが、日本は世界の中で、最も財政も健全であるし、経済的にも心配のない国だ。

国の経済の健全性ということで言えば、問題にすべきなのは、財政収支ではなく経常収支である。

経常収支が黒字の国は、国民が自分たちの稼ぎ以下で生活しているということだし、経常赤字の国は、国民が稼ぎ以上の暮らしをしていることになるからだ。

 

日本経済が健全な理由

世界中の大部分の先進国が、いま国際収支で経常赤字を出しながら自国を運営している。

主だった先進国で、経常収支が黒字で運営しているのは、日本とドイツとオランダだけと言ってもいいくらいになってしまった。

経常収支が黒字であることは、主に貿易収支と所得収支が黒字ということだ。

貿易収支とは、物の輸出入の収支だ。

これは、あまり説明を必要としないだろう。

所得収支とは、海外投資の収支である。

海外に投資をしたり融資をしていたりするものから、投資ならば配当が入ってくるし、融資ならば金利収入が入ってくる。

それに対して、海外から日本に投資や融資をしている国に対しては、日本から配当を出したり、金利の支払いをしたりする。

その差し引きが所得収支ということになる。

日本の国債のほとんどを日本人が持っているということは、国債は政府と国民との間のやりとりにとどまっているということだ。

国債は、初めから稼ぎのない政府という専業主婦が、稼ぎのある国民である夫に借金をしているという、内輪の話に過ぎない。

もともと「貸して」というのも「ちょうだい」というのも、ほとんど実質的に違いはないおねだりなのだ。

外に対する借金ではないから、問題はない。

 

2012年10月から2013年2月までの4カ月間連続して、経常収支が赤字になっている。火力発電用の液化天然ガスが高止まりしていること、円安が進んで輸入額が大きくなっていることが影響している。

 

インフレを進めて国債を増発すれば危機を招く

インフレになったら、まず国債の価値が目減りする。

国債がどんどん売られれば、当然国債の価格は暴落する。

暴落するとどういうことになるか。

いま日本国債の約40%は銀行が持っているので、次々と銀行危機が起きることにもなりかねない。

 

高齢化社会こそ豊かな社会であることを自覚すべきだ

高齢化が社会全体を悪くする、あるいは、経済的に足を引っ張っているなどと言われるが、本当なのだろうか。

国別の平均寿命を出せばわかるが、国民の平均年齢が若い国はほとんど最貧国で、高齢者の多い国はほとんどすべて豊かな生活水準の国である。

 

第一次産業も第三次産業も前とは洋々

日本の第一次産業が心配ない理由

最近になって、日本の第一次産業は、今世紀の後半になると、世界の最先端を行くようになるので、その心配は全くないと考えるようになった。

これから30年ぐらいは、日本の農産業にとっては、きつい時期が続くかもしれないが、50年くらい経てば素晴らしい環境になるので、心配することはないという確信を持つことができるようになった。

世界地図で、農地がどれぐらい荒れているかがわかるという地図があるが、ほとんど無償で残っている広い農地は、世界中に3つしかない。

カナダとロシアのシベリア地方と、日本の本州、九州、四国である。

林業では、世界中で国土の70%前後が森林で覆われている先進国は、今や、たった3カ国になってしまった。

そのうちの1位がフィンランドで72.9%、次いで2番目がスウェーデンで68.7%、3番目が日本で66.5%である。

3番目は水産業である。

日本は、養殖漁業の技術では世界最高水準を行っている国である。

そう考えると、日本の第一次産業は、今はちょっと厳しい状態にあるが、これから50年ぐらい経ったら、農業でも林業でも水産業でも、世界最先端を行く国になっていると考えられる。

すなわち日本の第一次産業は大丈夫である。

 

日本のあるべき姿のモデルは江戸時代

江戸時代は、製造業から非製造業というよりも、稲作中心の農業から工業や商業が活発になる時代へという転換点だった。

江戸時代は、表向きにはあくまでも米作中心だったが、実はいろいろなところに多角化していて、しかも、米以外の作物で収入を得ていた農家の方がはるかに豊かになっていた。

また、江戸時代の場合に、ものを非常に節約して使っていた。

例えば、木綿の布は、まず着るものに使って、くたびれ果てた頃に雑巾に使って、雑巾で使えないほどボロボロになったら燃やす。

燃やした時に風呂釜に残った灰を肥料として売った。

それぐらい江戸時代というのは、ものを倹約して使い、リサイクルを考えて暮らしていた時代である。

その反面、歌舞伎や寄席などに行くときには、晴れ着を着て贅沢をする。

さらに、江戸時代は、芸ごと、習い事が普及した時代である。

つまり、サービスには金を使っていたので、カネが回っていたということもできる。

 

私(チキハ)の感想です。

経常収支が黒字だから日本は大丈夫という話でしたが、それは一年間のやりくりに対するものでしかなくて、資産や負債を考えていない点で、穴があるなと思いました。

稼ぎのない専業主婦と、亭主とのやりとりという例えがとても面白いと思いましたが、専業主婦が裏付けの亭主発行の通貨の信用はどうなのか(政府発行の国債が信用の裏付けである日本銀行券、と何かで読みました)と思いました。

外国の誰だったか忘れましたが、影響力のある人の発言を最近Twitterで見ました。

日本の貧困層は、ヤク中でもなく、怠け者でもなく、浪費家でもない、政策のミスによるもの。

はっとしましたよ。

この本では、アベノミクスを批判していました。

日本は、借金をなくして政策を変えればやっていけるのだと思います。

農業や林業の資源に恵まれていること、養殖などの技術に優れていることで、今後の日本の一次産業にも大きな期待が持てます。

そのことを学びました。