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ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

世界2.0

『世界2.0』(佐藤航陽、2022)

メタバースの歩き方と創り方

過去記事で、『お金2.0』を紹介しました。

同じ作者の「さとうかつあき」さんです。

<以下一部抜粋・要約>

 

メタバースとは何か?

今、世の中ではメタバースという新しいテクノロジーに対して、インターネット以来の革命だという人もいれば、あんなものはいかがわしいと馬鹿にする人もいます。

メタバースとは、インターネット上に作られた3D( 3次元)の仮想空間のことです。

VRゴーグルをつけて、バーチャル・リアリティーによって形づくられたアナザーワールド(もう一つの世界)に人間がログインしてしまう。

あたかもこの世とは別のアナザーワールドに紛れ込んでしまったかのように、そこで冒険を始めてしまう。

メタバースの世界は、カセットゲーム時代の『ドラゴンクエスト』のように「すでに出来上がった完成品」ではありません。

ネット上にオープンソースとしてアップロードされた世界は、ユーザがいくらでも作り替えることが可能です。

ユーザーがログインすると、メタバースの世界をアバター(分身)が自由自在に移動できます。

 

コンテンツ大国日本の強み

メタバースは日本に圧倒的な「地の利」があります。

実は日本は極めて有利なポジションにあるのです。

それは日本が漫画・アニメ・ゲームなどの「コンテンツ大国」であるという利点です。

ここまで日常的に漫画を読み、アニメに触れて、ゲームに課金するという国は世界的に見ても非常に珍しいです。

あまり注目されていませんが、日本はコンテンツに対して最もお金を払う国民性を持っています。

スマホゲームでもユーザ一一人あたりの課金額は日本が世界でぶっちぎり1位です。

漫画などのコンテンツにもちゃんとお金を払う習慣があります。

メタバースにおいてもアバターやデジタルアイテムを購入するということに最も抵抗がないのが日本人なのです。

 

テクノロジーの役割とは既得権益の民主化である

そもそもテクノロジーの役割というのは「一部の特権階級だけが独占していた能力を民主化すること」に他なりません。

 

メタバースは「神の民主化」

メタバースというテクノロジーは何を民主化し、人々の手に渡すのでしょうか。

それは「神」です。

キリスト教やユダヤ教・イスラム教といった世界宗教は、1000年以上にもわたって「世界は神様が創造した」と信奉してきました。

メタバースが形づくる「もう一つの世界」は、神様が創造するわけではありません。

メタバースを創るのは人間です。

つまりメタバースというのは世界を創造するという「神の民主化」なのです。

 

Web3とクリエイターエコノミー

Web3とは「ブロックチェーン技術などを基盤とした非中央集権的なインターネット」を指すことが多いです。

Web3はこれまでGAFAなどのブラットフォーマーが中央集権的に支配していたデータの主導権をユーザの手に戻し、非中央集権的・分散的なインターネットを実現していこうという流れを指しています。

 

「生態系」としての世界と、「空間」としての世界

「世界を創る」と言うときの「世界」は、異なる2つの意味を持っています。

第一に、人間が目で見て触れて五感で感じる「空間」としての世界があります。

第二に、国家や社会やコミュニティーのように、人間の頭の中にある「生態系」としての世界です。

 

世界を変える=新しい生態系を創ること

「世界を変えたい」と考えている人は、既存の世界の問題点を克服するために新しい生態系のモデルを考え、仮想空間(もう一つの生態系)を実際に成り立たせることを成功させれば良いのです。

 

うまく回っている生態系の特徴

①自律的であること

外部からの指示に従って生態系が回るのではなく、まるで集団そのものに意志があるかのように動くことができる。

生態系を自律的に回すためには、参加者が生態系内のルールをよく理解し、自分が何をすればよいかわかっている状態が保たれていなければいけません。

②有機的であること

生命は信じられない数の細胞が集まって相互作用を進めながら、1つの生物として活動します。

生命と同様に、生態系もそこに参加する各人が交流しながら、全体を形作っていくものです。

③分散的であること

「分散的」の反対語は何でしょう。「中央集権的」です。生態系の真ん中に、常に指示をする司令塔がなければ成り立たない。こういう生態系は、司令塔を失った瞬間大混乱に陥ります。

分散的な生態系は、司令塔なんて必要ありません。

司令官がどこにもいなくても、全体が止まることなく動き続けます。

 

世界を創ることが未来の仕事になる

今後さらにグローバル化とテクノロジーの進化が加速していくと、物事を論理的に整理して改善していくだけでは足りず、世界と人間の普遍的真理を土台にした生態系を作り出す能力があらゆる場面で求められてくるはずです。

今後生態系を創る能力は、「世界を変えたい」という特殊な願望を持つ人だけでなく、組織のリーダーになるような人には当たり前に求められてくる素養になるはずです。

 

無数に広がる多元的な平行世界

私を含めた現代の大人世代は、まだネットが存在せず、唯一の世界だった物理空間を奪い合っていた時代を知っています。

そのため私たち現代人には、何かを2つの対立構造で考える思考の癖が染み付いているのです。

しかし無限に広がる仮想空間で世界を自由に創れれば、世界はたったひとつの物理空間ではありません。

世界は何層も重なり合い、多元的に人も併存するものです。

それぞれの生態系は過剰に干渉しすぎることなく、多様な生態系が広がっていくでしょう。

 

人間は辺境に進み続ける

現実世界の資本主義社会は、すでに限られたパイを奪い合うゼロサムゲームの競争に疲れ始めています。

プラスとマイナスを差し引きすれば、合計(sum)は常にゼロに落ち着く。

今の人間に残されたフロンティアとは、宇宙空間と仮想空間です。

とりわけ仮想空間を開発するにあたり、ゼロサムゲームで誰かとつぶし合いをする必要なんてありません。

人類にとって、世界とは生まれた瞬間からずっとそこに「在る」ものでした。

「在りものの世界」を開拓して、そこに適応して生きていくのが人生でした。

メタバースの仮想空間が実現すれば、世界とは「自ら創るもの」へと変わり、人類の間で壮大なパラダイムシフト(世界観の転換)が起きます。

メタバースによって3次元の仮想空間が出来上がれば、最終的に現実世界の価値は今の10分の1くらいに下がると私は見ています。

 

宇宙の本質は物質(ハード)か情報(データ)か

ホイーラーは生涯をかけて「宇宙の本質とは何か」という問いを様々なアプローチから研究していて、晩年に自伝で「(宇宙の本質は)最初、すべては『粒子』であると考え、次にすべては『場』であると考え、今すべては『情報』であると思っている」と語っています。

 

私(チキハ)の感想です。

著者は、ハラリ氏のいうような、人類はテクノロジーに喰われてしまう、という未来を否定します。

テクノロジーは、使う人によるのだといいます。

インターネットが出てきたとき、「社会を素晴らしいものに変える可能性があったのに、そうはならなかった」と、落胆している人を見て、そうじゃないと、良いところがたくさんあったじゃないかと。

「テクノロジーは、一部の人が持っていた能力や権力を民主化する」、どれほどの一般人がそのことを知っているのでしょうか。

私は知りませんでした。

メタバースでは、なりたい自分、理想の世界を創ることが出来ます。