『ツーカとゼイキン』(明石順平、2020)
お金を増やしたい心理は、国も個人も同じだった。
<以下一部抜粋・要約>
通貨は価値の交換物にすぎない
本書を読んで、人類がいつの時代のどこの国でも「通貨を増やしたい」という欲望に逆らえなかったということが、よくわかったと思います。
今、日銀が行っている異次元の金融緩和も同じです。
実質金利を下げて借金しやすくする。
借金がしやすくなるということは、預金通貨が増えやすくなるということです。
そうやって景気を良くしようとした。
「お金を増やせば何とかなるだろう」という発想から抜けられないのです。
これは人類に本質的に備わっている発想であって、人類の歴史が続く限り繰り返されるのでしょう。
国債と通貨は運命を共にする
なぜ、どの国も中央銀行に通貨発行権を持たせ、中央銀行による国債の直接引き受けを禁止するのか。
政府自身が通貨を発行しすぎて極端なインフレが生じるということが、人類の歴史上何度も繰り返されたからです。
世界で最初に紙幣を発行した中国の宋、その後の金、元でもそうなりました。
そして、今その現象が起きている真っ只中なのがベネズエラです。
日本もかつて明治政府が政府紙幣を発行しすぎてインフレになったので、中央銀行である日銀を設立し、政府は通貨発行権を手放しました。
しかし、結局「お金を増やしたい」という欲望に勝てず、直接引き受けに手を出し、戦後の極端なインフレを招きました。
管理通貨制度というのは、こういう極端なインフレが生じないよう、「中央銀行が通貨を増やしすぎない」という大前提に立って運用されているわけです。
国債の直接引き受けはこの大前提を破壊する行為ですから、投資家たちは「円が過剰供給されて価値が下がる」と予想し、売りは止まらなくなるでしょう。
そして極端なインフレが発生します。
すなわち、投資家たちから見れば、形式的にデフォルトを避けるための直接引き受けは「インフレで債務を踏み倒すぞ」といわれるようなものです。
消費税廃止論は市場を無視している
これは何度でも強調したいことですが、社会保障を充実させている国々の中で、消費税の負担が軽い国は1つもないのです。
デンマーク、スウェーデン、フィンランドはいずれも対GDP比で言えば日本の倍以上消費税をとっています。
消費税こそ弱者のための税です。
景気に左右されないから、安定して社会保障費を捻出できる。
それで弱者を救っている国がある。
確かに「率」で見れば不公平ですが、「額」で言えば富裕層にたくさん負担させることができます。
そして給付を充実させるには、「絶対額の大きさ」が重要です。
逆進性の不公平は、給付を充実させることで相殺すればよい。
現に消費税の負担の重い国は、皆そうしています。
おわりに
円が大暴落した場合、輸入の決済通貨であるドルを得ることが困難になりますので、輸入物資が激減し、極端なモノ不足になるでしょう。
お金も物も人も、全てが不足するという状態になります。
所得税も法人税も消費税、あらゆる税を全方位的に増税していく必要があります。それができなければ、社会保障費を捻出できず、生きていけない国民が増えるだけです。
何度も強調しますが、社会保障が充実している国の中で、消費税の負担が軽い国は1つもありません。
税金とは、国に一方的に取られるものと解釈するのではなく、みんなで出し合い、支え合うもの、という認識に変えていく必要があります。
それができなければ、憎み合い、嫉妬しあい、弱者を見捨てる冷たい「自己責任国家」になるだけでしょう。
超縮小社会の痛みは避けられないのです。
できることは、みんなでお金を出し合って、負担を分かち合って、その痛みを和らげることです。
それが最悪の状況の中で取り得る最善の手段です。
私(チキハ)の感想です。
ここに書かれていることは、日本国内の事情です。
アメリカは、金融引き締めにより、金利が上がっています。
金利上昇は、利払いの額も上げます。
すると純資産が少ないので、債務超過になるおそれがあります。
GDPとは、価値を生み出す国のチカラだと言います。
日本人は、その点優れていると聞きます。
世界の投資家は、総合的な日本をどのように評価するのか興味深いです。
この本の中に書かれていた収容所の話は面白かったです。
タバコが貴重なものであって、通貨の役割を果たし始めた。
そして、これは使えると気付いてタバコが増えた。
すると価値が下がって交換できるものが少なくなった、ということでした。
政府には通貨の価値を守ることが出来なかった。
今後はそれができる国が、生き残るのだと誰かが言っていました。
それは、個人の問題でもある、アワワ。