『イーロン・マスクはスティーヴ・ジョブズを超えたのか』(竹内一正、2022)
<以下一部抜粋・要約>
2人に共通する「巨大な敵に立ち向かう姿勢」
ジョブズは敵が巨大だからと言って逃げることはしなかった。
あえて向かっていった感がある。
ジョブズは反権力のカウンターカルチャーの申し子だった。
アップルではコンピューター界の支配者だったIBMを相手に、ひるむことなく戦いを挑んだ。
ネクストではワークステーション市場を席巻していたDECやマイクロシステムズに、ピクサーではアニメ映画界の帝王ディズニーに果敢に挑んでいった。
師匠でもある最重要顧客を訴えたマスク
「巨大な敵に怯まない」という点は、マスクも同様だ。
ロードスターを批判したBBCにかみつき、モデルSの走行性能にケチをつけたニューヨーク・タイムズに牙をむき、EVの直販に対する全米自動車ディーラー協会からの提訴は堂々と受けて立った。
しかし、本当に驚くのは、スペースXが宇宙開発の師匠のNASAを提訴したことだ。
スペースXの勝利だった。
マスクはジョブズと違い、権威と見れば誰でもかれでも噛み付くようなことはしない。
だが、「間違っている」と思ったら、すべてを賭けて戦いを挑むのだ。
「垂直統合型」で戦う
アップルもテスラもスペースXも基本的には「垂直統合型」だ。
アップルはハードウェアだけでなくソフトウェアも開発している。
1社でハードもソフトも開発して完結させる「垂直統合型」が、アップルの持ち味ともいえる。
さらに、CPU半導体の設計もアップルは自社でやるようになった。
イーロン・マスクも垂直統合型を好む経営者だ。
テスラはモーターもバッテリーパックも車体も内製している。
スペースX=ロケットエンジンも燃料タンクも宇宙ロケットも内製している。
そして、テスラもスペースXもソフトウェアまで自社で作っている。
「高速学習の達人」という共通点
ジョブズもマスクも「学びの達人」であった。
それも、周りにいた専門家たちから驚くほどの短期間で知識を吸収すると、瞬く間に彼らの上を行ってしまう。
単に学ぶだけでなく、その先に自分流の進化を加える点も共通していた。
企業は社長の器以上にはならない。
つまり、社長が成長しないと企業は成長できない。
ジョブズもマスクも学んで成長し続ける社長だったから、アップルもテスラもスペースXも成長し続けることができたのだ。
「どこを起点に未来を作るのか」という小さくて大きな違い
多くの共通点がある一方、16歳の年齢差があるジョブズとマスクには決定的な相違点がある。
それは、これまで何度も触れてきた、「どこを起点に未来を作るのか」という視点の違いだ。
ジョブズは今を見て、未来を作った。
かたやマスクは、未来を決めて、今を作っている。
この相違は2人の経営に大きな違いを与えている。
外注か、それとも内製にこだわるか
アップルはiPhoneを自社では製造していない。
イーロン・マスク率いるテスラはEV用のモーターから車体、バッテリーパックまで多くの部品を内製している。
「プロダクト・ピッカー」対「テクノキング」
これまで何度も述べてきたように、ジョブズは徹底した「プロダクト・ピッカー」だ。
ピッカーとは細部にこだわる人のこと。
ジョブズはユーザー目線で製品を事細かに観察し、部下に無茶だと思われるような指示を出す。
技術者と最善策を議論する。
議論の中で「他者がやっている方法なので」などと答えた部下には、「物理学で考えろ」と檄が飛ぶ。
アナロジー(ものまね)ではなく、なぜその材料が必要なのか、どうしてその構造にするのか、原理を突き止め技術革新を起こすのがマスクの流儀であり、スペースXとテスラのやり方だ。
私(チキハ)の感想です。
ジョブズが、変わり者で、「お前に雇われてやるぜ」と入社を決めたときに言ったとか、またそれを雇ったとかのエピソードが記憶にあります。
アメリカって、能力があればそんな人でも雇うんだとそのときは驚きました。
この本を読んでの新しい発見は、ジョブズが、反権力のカウンターカルチャー(主流文化に対抗する文化)の申し子ということです。
反権力、でありながら主流になっていくということにゾクゾクしました。
イーロン・マスクは、金にもならない宇宙開発をやっている不思議な人(未来人とか宇宙人)という次元が違う感じがしていました。
しかし、特許を公開して誰もが使えるようにしたり、ロケット打ち上げをライブで見せたりすることは新しい企業家、価値観の先導者のように思えます。
Twitter買収の後では、内部告発を自らしてました。
「言いたいことは言うし、その結果お金が無くなるならそれでいい。ソロスは人類を憎んでいる」
トランプ氏と対抗するような人物を推すような記事もあり、よくわかりません。