『電子マネー革命がやってくる!』(安達一彦/山崎秀夫、2017)
<以下一部抜粋・要約>
黒船電子マネー日本上陸の衝撃を
アップルペイ日本上陸。アクセス集中で接続が一時ダウン
アップルペイとはアイフォン7やアップルウォッチ2により、スマートフォンを使って決済ができるサービスです。
クレジットカードや欧米では当たり前の銀行デビットカードなどをアイフォンに登録して、買い物の決済に利用するサービスです。
アップルペイで注目すべきは国内の決済サービスとしてSuicaなど電子マネーを必ず通すことになった点でしょう。
一方ロンドンの地下鉄などではアップルペイに登録されたクレジットカードのまま電子マネーを経由しないで改札を通過することができます。
つまり欧米はクレジットカード中心、一方日本ではサーバー型電子マネー中心のサービスとして提供されています。
アップルペイへの対応によりJR東日本のSuicaは「サーバー型電子マネー」に生まれ変わりました。
つまりこれまでのような「お金がICカードの中にある古い電子マネー」から「お金がインターネットの向こう側にあるサーバー型電子マネー」という全く新しいサービスに変身したという訳です。
一方、アンドロイドペイは、楽天Edyと組んで静かに日本に上陸しました。
Edyもサーバー型電子マネーへと静かに変身し始めています。
仮想通貨とサーバー型電子マネーの差
実は「仮想通貨とサーバー型電子マネーは同根」なのです。
相違点は①「仮想通貨はレートの変動があり、登記に向いている。」②「サーバー型電子マネーは決済に向いている」という点でしょう。
一方、仮想通貨には預金のような口座管理の仕組みがありません。
ビットコインを見ればすぐわかりますが、仮想通貨は円やドルに対してレートが変動します。
一方ペイパルやauウォレット(KDDIのサーバー型電子マネー)などは、円との関係が 1対1の固定レートであり、変動しません。
ビットコインのような仮想通貨を決済に使う場合は、通常、決済の都度、取引所でビットコインを売り円を買って決済します。
最近では国内でも小売業の中にはビットコインでの支払いを受け付けるところが増えています。
しかし多くの場合、商品の決済時にはビットコインの取引所を通して円を受け取っているのが実情です。
仮想通貨とサーバー型電子マネーの両方に使えるブロックチェーン
決済目的で銀行などにより新しく作られる仮想通貨(ブロックチェーン方式のもの)は、サーバー型電子マネーの進化系という見方です。
ビットコイン以外にブロックチェーン方式を使っている仮想通貨では、豪州のコモンウェルス銀行が銀行窓口で取り扱っている仮想通貨リップルが有名です。
2016年6月現在、グローバル銀行上位50行のうちの12行がリップルを決済で取り扱っています。
グローバルな動き
米国19銀行が同一ブランド
米国銀行業界19行は銀行間決済ネットワーク、「クリアエクスチェンジ」というサービスを運営しています。
今回クリアエクスチェンジは参加者を拡大し、一挙に一般消費者の参加を求める「zelle(ゼレ)」ブランドによるモバイル個人間送金サービスを開始しました。
狙いはペイパルおよびベンモなどサーバー型電子マネーへの対抗です。
これにより小切手が不要となり携帯電話の番号指定やショートメッセージで送金ができます。
明らかにベンモやペイパルを意識しているのは若者に人気の「食事の割り勘精算」などを対象とすると発表している点です。
そして今後は決済などの分野への拡大も発表されています。
一方、日本でもりそな銀行、横浜銀行や住信SBIネット銀行等が構築を検討する新送金システムのコンソーシアムが立ち上がり、三井住友信託銀行など38行が参加します。
このサービスは銀行間送金ネットワークであり、全銀ネットでは不可能な365日稼働、24時間送金のサービスの実現を狙っています。
ブロックチェーン方式を情報処理サービスに活用しているためコストを大幅に安くでき、2017年3月ごろの稼働を目指します。
米国の事例の流れを参考にすれば、当然消費者にも門戸を開き、スマートフォンによる個人間送金や決済を加えるかもしれません。
核心対談 電子マネー革命がもたらすもの「現金決済が消えていく!産業構造にも大きな変革の兆し」
全米の銀行間で今やペイパルはドルと同等扱い
ーー国が管理する「E 円」を出すべきではないかというのが安達さんの考えですね。
安達 はい。
結局、通貨の主権を海外勢に持っていかれるのはまずいのではないか、という話です。
SNSのLINEも、資本は韓国系ですからね。
SNSでは、日本はmixi がほぼ駆逐され、Facebookは米国です。
だから日本のSNSがない。
電子マネーはSNSの延長で出てきている。
SNSはインフラです。
そのインフラをとられてしまったのはまずい。
山崎 今電子マネーに対する規制がどうなっているかというと、米国で1番有名なサーバー型電子マネーはペイパルで、これは個人間オークションのeBay から出てきたサービスです。
米国ではペイパルはACHという銀行の小口決済機構に参加しています。
お金の払い出しと振り込みが手数料なしでできる。
これでクレジットカード会社は大変な危機感を持っているのです。
ーー金融の産業インフラがガラッと変わってきていると。
山崎 そうです。ペイパルに対してはほとんど規制がない。
したがって米国の場合、電子マネーは、たまたま民間会社が扱っている、ペイパルというサービス名が付いている通貨というイメージです。
実質的にドルと同じ、何の規制もありません。
安達 通貨というものはもともとサービスであったわけです。
信用で成り立っている。
だからSNSの符号でも何でもいいわけです。
そこに信用があれば。
SNSでものを流通させるのは簡単だしコストも安い。
電子マネーはそれに乗せれば良い。
銀行口座を作らないで済む。
発展途上国では銀行口座を作れる人は少ない。
だけどSNSのアドレスなら誰でも簡単に持てます。
私(チキハ)の感想です。
日本の電子マネーSuicaなどが、アップルペイやグーグルペイの決済システムを利用しなくてはならないことはショックでした。
これでは、決済の手数料も、情報も持っていかれてしまいます。
スマホ搭載のフェリカ(非接触型ICカード技術)は、日本の技術で、世界標準と書いてあります。
世界中のiフォンにはフェリカチップが入っています。
iフォンは1台売れたら、6割は日本の部品会社が儲かるのだとNYタイムズにも書かれていたようです。
もどかしい。
ケニアは、決済・送金に関してはフィンテック決済の最先端の国です。
「エムペサ」は、サーバー型電子マネーで、携帯電話のショートメッセージで送金することができます。
決済も支払い金額と相手の電話番号を打ち込めば済みます。
この本は、2017年の発刊ですが、2021年の記事が日経新聞にありました。
通信会社の業界団体である英GSMAによると、21年に世界で決済されたモバイルマネー1兆ドルのうち、7014億ドルがアフリカでだった。前年比増加率は39%と世界の31%を上回った。
GSMAは「モバイルマネー」の定義について、携帯電話を使った送金やお金の受け取りで、銀行口座を持たない人にも使えるサービスとした。伝統的な銀行を利用する手段として携帯電話を使うモバイルバンキングは除外した。従来型の銀行やクレジットカードにリンクするアップルペイやグーグルペイのような決済サービスは含まないとも明記した。
いいですね、モバイルマネー。
詳しくはわからないですが、日本も独自の決済システムができるといいと思います。