その人は、私の心をこじ開けようとしていた。
その人たちにとって、性の交流は軽かった。
嘘をつくのも平気だった。
私はと言えば、そのルールは合わなかった。
だから、そのことをはっきり言えばよかったのだ。
「お付き合いする相手以外との性の交流を持つルールは私には合わない」と。
そう言わせたかったのだと、分かっていた。
不思議なことに、その人は私の色に染まりたいという願望があった。
不思議、というのには理由がある。
私は、自分自身に優れたものを見いだせなかった。
丁寧に話をすれば、違ったカタチになったのかもしれない。
その人の経験や生き方を尊重することが出来たかもしれない。
当時の私は、そこまで成熟していなかった。
それから時間は流れた。
リーダーは、向いていない。
人の生き方を変えるようなことには消極的で、逃げたくなる。
「他の誰かとお付き合いをすればいい」
そうすればその人もまた、自分を変える苦しみに向き合わずに済むだろう。
私が自身の切望を、説明ができず、閉ざされた相手は混乱してしまう。
私は、鬱みたいに何もやる気がなくなってしまった。
一人で穴倉の中でしゃがんでいるような孤独を感じていた。
また一人だ、と泣きじゃくっていた。
寂しくなったので、目をつぶって心の中で黒龍と金龍を呼ぶとそれはすぐに現れた。
いつもすぐに駆けつけてくれる。
首のあたりの皮は美しく輝いている。
私は、手で撫でているうちに落ち着いてくる。
その時「いつも一緒にいるよ」という言葉が伝わってきた。
多分、龍ではない。
いつも私のブログを読んでくれている人だ。
「いつまでも一緒にいるよ」ではなかったかと繰り返し思う。
私は安心して、幸せに包まれた。
自分のどこに優れたものを見出せばいいのか。
何を拠り所にして、対話をすればいいのか。
相手を理解できること、相手を尊重すること、苦しみと喜びの共感は、母親が子供にするものだ。
私にはこの共感と同情が出来るのだろう、と思った。
私は、苦しみや喜びを分かち合いたいと思っている。
夢を見た。
「ひさしぶりだねー」と水色のふにゃふにゃした宇宙人が言う。
私は、心から安心して何もかもを分かり合えると感じた。
生きるためにまとった鎧は必要なかった。