『2050年の世界」(ヘイミシュ・マクレイ、2023)
著者はイギリスの新聞社経済コメンテーターである。
この本は、事実に基づいて、未来を読むといった趣旨で書かれている。
過去には2020年に向けた未来予想図も上梓している。
人口、気候変動、エネルギー、民主主義、格差、テクノロジー、地政学的変化——。
データによってどのような未来が想像出来るのだろうか。
私たちに1番関心が深いのは、やはり日本国だと思う。
日本語版への序文として、このように書かれている。
日本は過去半世紀以上にわたり、世界経済でとても大きな役割を果たしてきた。
次の30年以降も、皆さんの国が世界経済を形作る、非常に重要な役割を担い続けてほしいと心から願っている。
本書で説くように、穏やかで秩序ある社会を作り、安全で誰もが憧れる生活様式を国民が送れるようにするなど、日本が世界に教えられることは本当にたくさんある。
しかも、世界第3位の経済大国であり、2050年にも大差の要因を維持する可能性がとても高い。
民主主義のもとですべての国民が快適な生活を送っている、非常に重要な成功例でもある。
世界から見た日本の姿というのはこのようなものなのだ。
短期間での狭い範囲での個人的な感覚とは違う。
そして、日本の社会が考えた方がいいと思われることをいくつかあげている。
日本はこれからも高齢化社会と向き合っていくことになり、その姿は世界にとって教訓となる。
そして、若い世界、特にアフリカで人口が増える中で、老いる社会がはたしてリーダーシップを発揮し続けられるのか、それでもそうしなければいけない、と続く。
著者は、世界はより良くなるという楽観論が根底にある。
私を取り巻く社会も、俯瞰して見れば良くなっているのだ。
私が子供の頃は、インターネットはなかった。
米ソ冷戦で、核実験をしていて、雨が怖かった。
2人姉妹だった。
両親の子供の頃は、テレビがなかった。
戦争や大震災で物がなく生きるのが大変だった。
母は4人兄妹だった。
祖父母の子供の頃は、電気水道がなかった。
7〜8人兄弟で、学校へは行かず子守りをしていた。
3世代のあいだに、著しい良い変化が起こっている。
著者はいくつかの不安もあげている。
アメリカの体制が崩れる。
中国、インド、アメリカの関係が悪化する。
ロシアが強く出すぎる。
サハラ以南アフリカが貧困から抜け出せない。
宗教紛争が勃発する。
環境の悪化と気候変動をもとに戻せなくなる。
中東がさらに不安定になる。
情報革命は恩恵をもたらさず、弊害を生み出すかもしれない。
民主主義への脅威。
著者は、次の世代を形作る要因で最も重要だと思う考えを示している。
中間層の世界。
アメリカは今よりも穏やかになり、居心地が良くなり、自信を深める。
アングロ圏の台頭。
中国——世界最大の経済国は攻撃から協調へと転じる。
EUは、中核国と周辺国に分かれる。
インドとインド亜大陸——明るい未来は手の届くところにある。
世界におけるアフリカの重要性が高まる。
グローバル化は、物の移動からアイデアと資金の移動へと転換する。
テクノロジーが社会課題を解決する。
人類と地球のより調和のとれた関係。
私(チキハ)の感想です。
祖母の子供の頃の話は、私が小さいときに母親から聞いた少しのエピソードがあった。
母親は、祖母のことが大好きだった。
泣き言や、グチを言っているのを聞いたことがない、と言った。
子供のころから本当に苦労した人なのだ。
そのころの日本人は、おおむねそうなのかもしれない。
水飲み百姓の子で、字が読めない。
小学生くらいの頃には奉公に出て、子守りをしていたのだ。
戦時中は子育てで、米を求めて、列車で田舎に行くのだ。
主には次の歴史的な体験をしてきた世代だ。
1923年関東大震災では、東京、神奈川で火災、津波による被害と、疫病、風評被害があった。
経済被害は、GDPの3分の1と言われている。
1925、26、27年と国内で地震が相次ぎ、震災債権が不良債権化する。
ニューヨークの株式暴落が2年後、世界大恐慌が始まる。
日本の昭和恐慌である。
そして、1931、33年と国内での地震があり、34年に大火がある。
そして、39年に第二次世界大戦が始まってしまうのだった。
孫の世代に似たようなことが起こるというのは、経済の本の中で読んだことがある。
だから、少し緊張感を持っている。
アメリカの中国製品がなくなると、どうなるのだ。
日本の外交は上手く立ち回れるのだろうか。
地球人の恐れや、天然に反抗する態度が、災害を引き起こすことがあると聞くと、身が引き締まる気がする。
老いた社会が、若い世界でリーダーシップを発揮できるのか、という問いに答えてくれる動画を見た。
こんな具合だ。
40〜70代が新たな長老として、長年の経験と目覚めた直感力を持ち、価値ある資質として尊重される。
もったいない精神と最新のテクノロジーの融合。
廃棄物を出さない製品設計。
シェアリングを基本とした消費形態。
地域内で完結する食糧生産システム。
大企業を引退された方々がその知識や経験を地域社会に活かす。
日本人なら、馴染みのある価値観だろう。
日本国内で実現したら、世界がそれをモデルにするのかもしれない。