『日本国債は国の借金ではなく、通貨発行益であることを証明する』(岩崎真治、2017)
〈以下一部抜粋・要約〉
まえがき
長年、生産現場に身を置き、機械部品を作る仕事をしてきた私にとっては、経済が停滞するということは、非常に奇妙で不思議なことだと感じられる。
生産現場においては、生産力の向上に停滞は全くない。
ただただ進歩し発展し続けるばかりである。
最も一般的な工作機械である旋盤では、30年以上前からコンピューターを内蔵したNC旋盤が急速に普及した。
他の工作機械についても同様であり、さらに新たなコンピューター式工作機械が開発されて普及し、日本の生産力は飛躍的に増大した。
そしてその期間はちょうど、日本経済が停滞し、衰退し続けてきた時期と重なるのであるが、このことを我々はどのように考えればよいのだろうか。
本来、日本経済は衰退するはずなどなかったのである。
我々は途方もない勘違いをしたために衰退するという過ちを犯してしまったのである。
経済とは「生産」であり、経済の発展とは「生産の増大」であるからだ。
「貨幣」を経済の中心に捉える考え方ではなく、「生産」こそが経済の実態であるとする思考形式によって、日本経済を捉え直す作業を、本書では行っていくことにしよう。
国は、国民に貨幣を供給できるが、国民から借金はできない
日本国債は、国の借金であると多くの人々は思い込んでいるが、これは間違いである。
一国の経済が成長する過程にあっては、必ず世の中に出回るお金の量は増加しなければならない。
もし増加しなければ、経済の成長は達成されない。
その経済成長に必要な貨幣の供給を、政府は国債の発行という借金の形をとって行ったのである。
なぜなら、中央銀行による貨幣供給制度においては、貨幣の供給は、中央銀行の国債買取によってしか行えないからである。
日本銀行は単独で貨幣を供給することはできない
旧日本銀行法第32条には、「日本銀行は銀行券発行高に対し、同額の保証を保有することを要す」と定められている。
その補償物件としては、手形や、国債他の債券、地金銀、外貨等が挙げられている。
したがって、保証物件を買い取ることがなければ、日銀は永久に銀行券を発行することはできない。
すなわち、国債発行という政府の協力があったから、日銀は戦後の経済成長に必要な膨大な量の紙幣を供給することができたのである。
このことによって起きたことは、一国の経済成長、生産の増大分に等しい政府の借金の積み重ねであった。
言い換えれば、マイナスの価値を持つ貨幣を発行したのである。
戦後から今日に至るまでの日本に起きたことは、経済の成長、発展であった。
政府が国民から借金をするなどということは起きていない。
政府が自国民から借金をすることは、理論上不可能である。
2種類のお金がある
お札を印刷して、そのまま世の中に送り込む方法は政府にのみ与えられた権限であり、日銀には与えられていない。
政府は何ら保証物件を取得することなく、直接紙幣を発行することができる。
なぜなら、政府による政府紙幣発行には、バランスシートを伴わないからだ。
政府紙幣には、通貨発行益が発生する。
政府紙幣を発行すると、紙幣の学面からこの紙幣製造に用意した経費を差し引いた金額が、発行者である政府の収益となる。
一方、銀行券には通貨発行益は発生しない。
発生しないどころか、銀行券は、発行者である中央銀行の負債になる。
日本政府は借金をしていないことになるのである。
経済成長とは、生産量が増大することである。
生産量の増大に対して貨幣量が増加しなければ、増大した分の生産量は消費されることは無い。
すなわち、需要不足経済に陥る。
なぜなら、需要を具体化するものは貨幣であるからだ。
この時、この需要不足を補うものは、政府の税収以上の歳出しかない。
これが経済成長の実態であり、経済の成長は、絶えず財政の赤字を必要とするのである。
貨幣供給方式を、現代の経済成長にふさわしいものに切り替えるべきである。
その方式は、政府による政府紙幣の発行である。
日本においては、1882年に中央銀行である日本銀行を創設した時、日本政府はそれまで保有していた貨幣を発行する権限を日本銀行に完全に委ねてしまった。
これ以後、政府は1度も貨幣を発行していない。
国債と株
それでは、「政府は国債を返済しなくてもよいのか」という疑問が起きるが、これについて答えることにしよう。
金融資産(国債)について
政府は当初、国債を返済するつもりで発行したのであるが、返済できないまま今日に至り、多額の国債が金融資産として世の中に流通している。
しかし、日本国は確実に倒産することは無いので、国債は、無価値になる心配のない非常に優良な金融資産である。
日本国債の価値の裏付けは、日本国全体の生産能力である。
政府は、国債を発行し、貨幣を発行して、世の中に金融資産を供給した。
その全金融資産と日本全体の生産能力のバランスが取れているので、日本は現在インフレになっていない。
インフレになっていないので、国債は返済しなくてよい。
よって国債は返済しなくてよい。
それは、株を発行した企業がそれによって得た資金を返済しないのと、同じことと考えればよい。
ミクロの欠陥をマクロが是正する
経済において、生産が主で貨幣が従であるなら、貨幣量は生産量に一致していなければならない。
そうであるのに、貨幣量が生産量に一致せず、生産量を下回る量になってしまうのであれば、その経済システムには欠陥があるのであり、その欠陥は是正されなければならない。
その是正の方法は、政府紙幣を刷って、人為的に所得を生み出し、これを国民に支給するというものである。
こうして甚だしい需要不足、経済を解消して経済の活性化を図るのである。
経済が活性化し、需要が高まれば、新たな雇用が生まれ、〈労働力過剰〉の状態を再び〈労働力不足〉の状態に戻すことができるだろう。
私(チキハ)の感想です。
経済を活性化させるために、マイナス金利にして、市中にお金を流していたのに、経済発展はしなかったと、私たちは聞かされてきた。
何が原因なのか、どうしたらいいのかと、議論があったと思う。
私は、体感として思うことがあった。
物や食べ物は捨てるほどあるのに、人々の暮らしが上向きではないのはなぜだろう。
格差の広がりが大きくなった。
分配の問題だ。
それは、ある意味で間違いではないのだろう。
複雑な資本主義のルールのもとにそうなっているのだ。
しかし、ここで述べられている経済発展の考えと、貨幣供給のルールは、分かりやすかった。
生産性が上がっていることが、経済発展である。
その生産性の向上と人の賃金が同じであれば、良いのだ。