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ガルブレイスーーアメリカ資本主義との格闘

『ガルブレイスーーアメリカ資本主義との格闘』(伊藤光晴、2016)

〈以下一部抜粋・要約〉

公共国家のすすめ『経済学と公共目的』

ーー経済的弱者を守る知識人の闘い

自己搾取とは何か

「自己搾取」という言葉を理解するためには、「自己努力」という言葉をその前に挿入すれば良い。

農民たちは日々自己努力をしている。

それは「勤勉」と言われる社会的美徳である。

だが、自己努力が強まれば、自己搾取になるのである。

サービス業も個人企業も、その経営は自己努力の上に築かれている。

それは家族農と変わりはない。

繰り返そう。

農業分野を含め、これらの分野の経済状況の悪化には、自己搾取まで進むことを防ぐため、政策介入しなければならない。

これがガルブレイスの考えである。

 

社会主義の失敗

ソビエト社会主義の成功と失敗はどこにあったか。

ガルブレイスは、彼が「計画化体制」と呼んだものに近い。

重化学工業分野では、計画経済のもとで一応成功を見たと考えている。

失敗したのは、まず農業の分野であった。

ソビエト政策当局者は、農業も工業と同じ論理で動くものとを考え、農業の集団化を進め、大規模農業経営を国有農業、あるいは共同集団農業で運営した。

しかし農業は工業労働者のように、1日何時間労働、週何日働くというようなものではない。

季節により、天候により、不規則で、特に時に未明から働き、日中は休み、ときには夜を徹して働き続ける時もあり、ほとんど労働もせずに済む季節もある。

自由な時間と自己努力、自己搾取が混在する労働である。

これを工場労働者のように集団化して管理するには無理がある。

サービス業においても、人々の心は離れていく。

 

市場体制内の諸政策ーー最低賃金、不況、カルテル、参入規制、輸入数量規制等

大企業の傘の中にいる労働者は労働組合もあり、賃金も高く、医療保険その他もあって恵まれている。

だが、その傘の外の労働者は組合もない。

こうした人たちへの対策として、ガルブレイスは、市場体制内の労働者が労働組合を結成できるように、政府が積極的に支援しなければならないとしている。

同時に、こうした分野での低賃金を引き上げるには、最低賃金制の導入と、その引き上げが必要である。

一旦不況になると、農業も自由な市場では不況からの脱出は脱却は難しい。

穀物が過剰になると穀物価格は大きく落ちる。

だが、必需品である穀物は価格が下がっても需要量はわずかしか増えず、さらに穀物過剰はその価格を大きく下落させ、農民に大きな経済的打撃を与えるからである。

これから脱却するために、政府が計画的に作付制限を導入し、協力する農家には奨励金、あるいは保証金を支払い、不況対策に成功したのが第一期ニューディールであった。

こうした考えは大企業体制とは違って、市場体制内の多数の企業には形を変えて適用できる。

これが彼の考えである。

「反トラスト法のあらゆる禁止規定から、諸企業を全面的に免除すること」。

フランスでは大都市の商店について、特定のものは参入規制が行われているが、「価格や所得が著しく低いとか、不安定な場合は、公的援助によって安定を図る一方、新規の企業を規制するべきであろう」と、これを認めている。

また、「サービス産業、小売業、零細製造業といった自営業の労働時間と労働条件を制限する」ことによって「自己搾取を制限する」ことを提案している。

 

「新しい産業国家」から「新しい金融国家」の中で

産業国家を支えるのは重化学工業であり、その中心の1つは製鉄業である。

表1は1958年から約10年間、各国の転炉導入状況を示したものであるが、日本が先頭を走り、アメリカが追いかける形になっていることがわかる。

表2は、1960年代末での世界の10大高炉を示したものであるが、そのほとんどが日本にあり、工業大国アメリカのものがないのが注目される。

国民経済にとって大きな問題は、アメリカの1980年代以降の産業の空洞化である。

同時に、1920年代以降、アメリカン・ライフを支えた電化製品の数々が、輸入品に変わり出したことも大きな変化である。

鉄鋼業から自動車産業まで、アメリカの「新しい産業国家」は揺らいだ。

ドイツ、日本という「新しい産業国家」との競争で揺らいだのである。

これらの国では、アメリカ以上にテクノストラクチュアが中核を握っているのである。

アメリカ資本主義はどこに向かったのか。

「新しい金融国家」である。

 

新しい金融国家

1970年代から80年代にかけて、アメリカ、イギリスの社会も政治も、その中心軸がリベラルを離れ、右に移動しだした。

世界経済も大きく変わった。

貿易を決済するために必要な資金の数十倍もの資金が、世界的に動き出したのである。

短期の投機資金が債権や株価の値上がり、値下がりを予想し、1日何十回となく、売り買いが国を超えて行われ、その累積が貿易に必要な資金の80倍にも達したのが90年代である。

投機資金の国際移動を規制しようとハリファックス・サミットで主催国カナダが提案したのが、アメリカの反対で実現しなかったのは、アメリカの金融業界の利益を進めるアメリカ政府の政策である。

ブッシュ時代の財務長官はウォール街出身であり、副長官も同じで、辞めるとウォール街に戻っている。

世界銀行総裁を務めた総裁は、J ・ P ・モルガンの人間であり、投資銀行カーライルには、元国務長官たちがいる。

ゴールドマンサックスの会長はクリントン政権の財務長官になり、その後シティグループに入っている。

製造工業の力を失ったイギリスも、失いつつあるアメリカも、比較優位の「金融国家」に移っている。

 

私(チキハ)の感想です。

ひどいもんですね。

アメリカの小学校は、裕福な家の子供、貧しい家の子が通うところでは、格差が激しい。

医療費も、日本のように高額になると免除されるなどの制度がない。

日本やヨーロッパとは公共の認識が違い、市場にまかされる。

日本人の感覚でいると、努力すれば良いなどと勘違いしてしまうが、そうではないのだ。

私たちは、日本の国に護られているといるのだと知った。

2024年の世界の租鉄生産ランキングによると、1位中国、2インド、3位日本、4位米国となっている。

藤原直哉さんの動画では、自分たちで新しい製品を作れるのは日本とドイツくらいと言っていた。

金融産業の崩壊と、アメリカの再編、今ある決済機関の再編などが着々と進んでいると言う。

後1〜2年で、大きな転換点になる。

日本でも、金融、政治も変わるのだと言う。

戦争は起こらないだろうと言う。

本当にそうなるのだろうか。

何かが起こるとき、重なるということはよくある。

線状降水帯のようなことが冬に起これば、大雪が降る。

日照不足になれば、作物は採れない。

感染症とロックダウン。

国際流通の滞りによるエネルギー、物資不足。

用心深さが必要かもしれない。