『ステークホルダー資本主義』(足達英一郎、2021)
〈以下一部抜粋・要約〉
気候変動がもたらす危機の時代
自然、資本と生態系サービスの意義
自然資本とは、地球上の再生可能/非再生可能な天然資源(例:植物、動物、大気、水、土壌、鉱物)を指す。
そして、食料や飲料水を得る新鮮な空気が作られる、適切な量の雨が降る、風光明媚な景色を見れることができるなど、「自然の恵み」と、私たちが当たり前のこととして感じている事柄も、「自然資本」があってのことである。
こうした「自然資本」が作り出してくれる「自然の恵み」は「生態系サービス」と呼ばれる。
土地、水、大気、生態系が長年の人間活動によって影響を受け、フローを生み出す能力を低下させてきている。
その実態は、生態系サービスを作り出す生産性が低下しているケースもあれば、利用可能な自然資本量自体が減少している側面もあるということなのだ。
気候変動の脅威
2004年2月英国の新聞『オブザーバー』が衝撃的な記事を掲載した。
米国国防省が、極秘に地球温暖化の安全保障上の影響を研究していたということを暴露したのであった。
地球温暖化が向こう20年の間に、軍事的衝突や自然災害を引き起こし、数百万人の命を奪う可能性があると分析した。
20年までに主要な欧州都市が面下に没し、英国はシベリア並の気候に変わる。
大干ばつ、飢饉、大規模な暴動が世界を襲い、多くの国々が限られた食料、水、エネルギー供給を守るために核兵器を開発することで、地球は無政府状態に陥ると報告書は予測したのだった。
幸いにも、予測の多くは、未だ現実のものとならずに済んでいるが、気候変動が安全保障を揺るがす脅威であるとする懸念は、全く払拭されてはいない。
気候変動が多数の難民をうみ、地域紛争を激化させたと指摘されるのが、ダルフール地方のケースである。
約20万人が殺され、集団国内の避難民や隣国のチャドに逃れた難民の数は200万人を超えるとされるが、大規模な干ばつで多数の農民が土地を離れたことが混乱のきっかけだったと言われている。
気候変動等、健康被害
2014年には、スイスのジュネーブにあるWHOの本部で「気候変動と健康被害」をテーマにした世界で初めての国際会議が開催された。
2050年に向けて、高温や火災の頻発、洪水の多発と汚れた水が媒介する疾病の増加、生物が媒介する疾病の増加、食料の生産性低下による栄養不足などを原因として、身体的な損傷や疾患、ひいては人が死亡に至るケースが大きく増加するとの認識に立ち、WHOは「基本気候変動のもとでの人の健康を維持するにはどうすべきか」「気候変動を緩和する取り組みが、どのように人の健康にも良い影響を与えるか」という2つの主要な議題を捉えた。
WHOのマーガレット・チャン事務局長は、会議冒頭の挨拶で「私たちの惑星は、人間の生命を健康な状態に維持しておく能力を喪失してしまっている」と懸念を強調した。
その上で、「マラリア原虫とそれを媒介する蚊の存在は、気候の変化に密接に結びついており、一気に流行化する恐れがある」「さらに、これらデング熱、細菌性髄膜炎も気候変動との関連性が高い」と警鐘を鳴らした。
また、「新たな病気の75%は、家畜もしくは野生動物が起源であるが、気候変動が生態系を乱し、固体数を大きく変化させることが、野生動物の人間の生活圏への侵入を超えた病原体の伝播をもたらしている」として、ニパーウィルスやハンターウィルスの影響拡大の事例を挙げた。
「明確な根拠は未だない」としながらも「気候変動は、エボラ出血熱の発生頻度に影響を与えているという見方がある」とも言及した。
酷暑は空気中のオゾンや他の汚染物質のレベルを上昇させ、心臓血管疾患及び呼吸系疾患を悪化させる。
さらに、花粉や他のエアロアレルゲンのレベルも高くなり、喘息の原因となって、世界で約3億人の人々に影響を与えることが予測されている。
健康被害や生命が直接的に脅かされる時代に
気候変動がそう簡単に緩和されないとすれば、今後も、気候変動による健康被害は引き続き拡大するだろう。
今回の新型コロナウィルスという感染症の流行が収束したとしても、私たちには再び新たな感染症が襲ってくると覚悟しておいた方が良い。
今回の新型コロナウィルス感染症の拡大、感染拡大に伴って継続される行動を自粛要請に対して、「そうやって一生制限してろ(笑)」という意見がある。
新たな感染症の出現や気候変動による健康被害を少しでも抑制するために、個人の行動には一定の制約がされる世の中が到来する可能性が高く、その抑制に失敗すれば、自由放蕩の代償として、健康や生命が、直接的に脅かされる状況が来る。
それでも政府や他者からの干渉を絶対に認めないという選択を一体、どれほどの人が指示するだろうか。
私(チキハ)の感想です。
「はじめに」でこう書いてある。
2019年8月、米経済団体とビジネス・ラウンドテーブルが「米経済会は株主だけではなく、従業員や地域社会などすべての利害関係者(ステークホルダー)に経済的利益をもたらす責任がある)とする声明を発表。
さらに2020年1月、世界経済フォーラムが、この年に掲げたテーマは「ステークホルダーがつくる持続可能で結束した世界」であった。
それでは決して世界は持続可能にはならない。
株主市場主義を是正するステークホルダー資本主義が、さらに「地球環境」と「未来世代」を明確に視野に入れることで、新たな資本主義の姿が見えてくるのではないか、私たちには活路が広げるのではないか、というのが、本書の問題提起である。
と、いうことだ。
トランプは気候変動は、人為的な問題だけではなく、自然の長期的なサイクルの一部ととらえている。
https://www.gepr.org/contents/20250203-01/
国立環境研究所によれば、今の気候変動は人為的なものであると結論づけている
https://www.cger.nies.go.jp/ja/library/qa/24/24-2/qa_24-2-j.html
この中で興味深いのは、80万年の南極の平均気温推定値だ。
私は、この猛暑は何年続くのか、何度まで上昇するのかが気になっていた。
80万年の図を見ると、南極では過去最高まで「あと4度くらいじゃね」とみた。
そんな見方でいいのだろうか。
なんでもいい、目安が欲しい。
サイクルでは、いつ氷河期の始まりに突入してもおかしくないようだ。
ただ、遅れているのだ。
私の感想なんですが、地球は健康的な気がする。
本当にバカにされそうな話なんですが、大木に触れて意識を木に向けると、何年か前に感じていた恐ろしいような感じがなく、清々しく感じられる。
私が変わったのか、大木が変わったのか、宇宙や地球が変わったのか定かではない。
地震や火山噴火、病原菌の蔓延が自然由来なら、必然なのかもしれない(自浄作用やバランス調整など)慌てず準備をしておきたい。
