大腸は、切ってもさほど影響のないところと、そうでないところがある。
私は、直腸にがんが出来た。
人工肛門になるのかと訊いたら、肛門から6cm以上あり大丈夫だ、ということだった。
へそと、周囲に穴をあけて、腹腔鏡手術を行った。
癌の前後数十センチの腸と、リンパ節を取った。
一旦、人工肛門をつけて、大腸の傷がつながるのを待った。
数か月後、人工肛門を取り外した。
傷跡は、人工肛門4㎝と、腹腔鏡1㎝の跡が数ヵ所ある。
4㎝の方は跡が残り、少しくぼんでいる。
当時は、傷口がふさがっても、力を入れると腸が飛び出すのではないかと恐れていた。
その後、ヨガの難解なポーズ(足のかかとを頭の上に乗せる)をしたときに、グリっと腸が変な感じになって「これは、ヤバい」と思った。
しばらく動けなかった。
人工肛門の時は、小腸の終りの部分を腹の外に出すのだ。
それを大腸とつなげたのが、ただつなげるのか、他に何かしているのか分からない。
腸を皮膚から出していたときに、どこかに固定するようなことをしていたのではないか。
それが、後まで残るのか、自然と消えるのか、など考えたが、そんな詳しいことは分からなかった。
ただ、数年を要して、違和感は薄れた。
今では、腹を伸ばしたり、捻ったりしていても影響はない(足のかかとを頭にのせるポーズはしていないが)。
ちなみに腸には痛点(?)がないらしく、痛みは感じない。
肛門括約筋には、大きな影響があった。
手術後の検査の時、検査液を腸に入れて、時間をおいてトイレで排出する。
全てが終わり、ズボンまではいてロビーを歩いていたら、残っていた検査液が流れ出た。
その感覚がなかった。
もし、そのような経験をすることがあれば、紙おむつは履いておいた方がいい。
初めの頃は一日に何十回とトイレに行った。
オナラと大便の区別がつかなかった。
便秘と下痢の繰り返しだった。
そのようなことが、数か月続いた。
本当に、徐々に回復していった。
数時間トイレに行かなくても済むようになり、肛門括約筋の機能も徐々に回復した。
3〜4年かかった。
年齢的にも、骨盤底筋が緩んでくる。
骨盤底筋を鍛える体操は、肛門括約筋にもきいてくる。
色々と試しているが、立ったままの姿勢で何かするときに、太ももの間にゴムボール(私は低反発枕が転がっていたのでそれを使っている)をグッと挟む、というのは日常的にできるので、おすすめだ。
6年後の今では、腸が便をためる機能を持ち始めている。
食事と排便のリズムが整ってきたし、整腸のコツがつかめてきた。
外出もできるし、外食を楽しむことが出来るまでに回復している。
ただし、オナラがよく出る。
肛門を、グウウッと閉められるようになるのは、もう少しかかる。
整腸に良かったのは、ホームメイドヨーグルト「PLANTA」(植物性プランタルム菌)で作る豆乳ヨーグルト。
これはあくまでも私の現在の腸に合っているだけかもしれないのだけれど、特に良かった。
私は、人工肛門の透明の袋に入った温かい便(小腸通過時点の糞)を観察する機会があった。
食べた物がどの速さで通過していくのか、どのような状態になるのか、そのときの腸の状態(めくれた腸が腹から出ているので、見ることができる)
はどんな様子なのか、観察出来た。
飲んだままの状態で出てきた市販のビタミンCサプリ(溶けていない)。
パンを食べたときに腸が赤く腫れること(アレルギー反応?)。
市販の野菜ジュースが、すごいスピードで通過すること(ジューサーで作る野菜ジュースは固形物のようにゆっくりと通過するので不思議)。
小腸は、栄養分を吸収する器官だ。
大腸が、主に水分を吸収する器官だと考えると、これらをどうとらえたらいいのだろう。
栄養分を吸収出来ていない(出来ない)物があること。
これらが、体の中で起こっているなんて、私の意識に全くのぼらないことだった。
私の知らないところで、選別は行われていた。
随分、生産性の無い労働をしていたものだ。
いや、させていたものだ。
こうなると、体は私のものではなくて、違う意志を持っている存在ということだ。
彼ら(?)の選別は、良い、悪いなのだろうか。
それとも、必要、不必要なのだろうか。
そしてそれは、最善なのだろうか。
こうして私という無知が、自然の偉大さを判断しようなんて無謀なことを考えている。