ユタカ2イキルオテツダイ

ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

恋の継続方法【とし子の場合】

一言一句を書きながらこれは先生の考えだと気付いた。

考え方や物事に向き合う姿勢が他の人と違った。

少しずつ自分が真剣になっていくのを感じた。

 

胸がしめつけられるようになった。

 

窓の外を見ると、遠くに山が見えた。

「わたくしには、手のとどかない人」

湿った灰色の空気が私を包むようだった。

 

  ある日、雲の切れ間から光が差し込んだ。

それは閃光。

「その山にむかって旅に出たら、歩き出してみたらどうなのかしら」

その発想自体先生のものだった。

呼吸をした。

今生でたどり着けないと思った。

「それならそれでいい」

よけいに胸が高鳴った。

 

瑠璃光は可能性と憧れ。

先生の後ろ姿を思い出していた。

歩き出す。

「近づいてゆくわ」

そして未来にはきっと。

 

とし子(60)