金ちゃん髪は、長く伸びています。切らないわけがあります。それは前髪で顔が隠れるからです。
そしてメガネをかけます。視力は良いのですから、「だてめがね」です。外出のときは、念入りに前髪をたらして、
その内側にメガネをかけて、マスクをして行きます。私は「ふむー」とそのようすを見ています。
そんなある日、布団につっぷしながら金ちゃんが、話しかけてきました。
「俺、最近受け答えとか、上手くなってきてると思うのね」
「うん」〈いきなりだな。なんか〉
「塾で帰ろうと思ったとき、目が合って(塾生とだと思う)。あんまり、関わり合いたくないから,こう、
かわしたら、ガラスに自分の顔が映って。こう、目が鋭い。威圧感あったんじゃないかなって」
「いや、金ちゃんから、威圧感かんじないから大丈夫」〈金ちゃんの対極に近いし〉
「威圧感は、いいこと一つもない。やっぱりメガネは必要かなって」
「いっ」<そのときは、かけてなかったのね>
「こう、近寄りがたい雰囲気じゃない、話しかけられやすい雰囲気を出すのはどうしたらいいんだろうね」
ということで、「自分は拒絶しておいて、話しかけられたい」ということの対処法について、
二つの話が役に立ちそうだと思いました。
【「こんな人になりたい」という人のまねをする】
質問に答えるというものでしたが、「太ってしまった。やせるにはどうしたらよいか」という悩みに対して、こう答えていました。
やせている人の傍にいて「やせている人はこんなとき、こう考えるのか」とか、「こう行動するのか」と研究する。そして真似てみる。
【コミュニケーションの上手い集団に入る】
思春期に隔離されて育つと、その後コミュニケーションが上手く出来ないらしいです。(ここまで聞くと金ちゃんは、
ビリッとしました。そして耳をすまして聞いていました)。
ある研究がありました。「思春期のラット」を隔離したとき、やはりコミュニケーションが出来ないのです。
そして、次の実験をしました。そのラットを「コミュニケーションの上手いラットと同じゲージに入れる」。
すると、「コミュニケーションが上手くなることが分かった」というものです。
メガネ購入で一歩進んだのに、前髪とマスクで顔を隠したことによって、二歩下がったかのようです。
しかし、私は考えました。今は二月の初めです。固いつぼみや種の中に、春は動き始めているのです。
金ちゃんも、表面上ではわかりませんが、芽を出し始める準備を着々と進めているのだ、と。