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ほんの少しずつ、ゆたかになってゆきましょう

基軸通貨の条件

『国際金融史』(編、上川孝夫・矢後和彦、2007)

いくつかの本の中で世界の覇権が 、アメリカから中国へと移るだろうと書かれています。

ここでは、その前の覇権国であったイギリスから、 アメリカへと移った様子が書かれていました。

<以下一部抜粋・要約>

 

ポンド体制とも呼ばれた パスク・ブルタニカは、 第2次世界対戦を境に解体・終焉をむかえた。

 対戦後にはブレトンウッズ体制の成立にともなって 、ドルを基軸とするバスク・アメリカーナの時代が始まるのであった。

 

戦後国際経済体制のあり方をめぐる両国間の 「対立と協調」の構図が あった。

 この構図における「対立」の関係は 経済的な苦境に追い込まれながらも 帝国意識を堅持し 通貨覇権の回復を 企図するイギリスと、 孤立主義を放棄してドルを基軸とする 戦後世界秩序を追及するアメリカとの 新旧覇権国の対抗の現れであった。

 

 同時に、冷戦の激化に伴う国際政治環境の変化への対応として、英米それぞれが 「協調」関係に国益を見出したのである。

 

英米官の戦後構想をめぐる「対立」の現れた 対戦直後 、その後の「協調」が不可避となる 1940年代末から50年代、 そして国際通貨ポンドの退潮が明白になった60年代の 国際通貨協調について、 その歴史的経緯をふりかえる。

 

イギリスは、1940年代後半、軍事縮小を始める。アメリカが引き継ぎ、共産主義を防ぐための世界のあらゆる地域への介入が始まる。

東南アジアおよび南アジアへの経済開発の援助も、イギリスからアメリカへと移っていった。

 

私(チキハ)の感想です。

 

英ポンドから米ドルに移行するのに1940年代から60年代までかかっていることが分かります。

まるで浸食してゆくかのようにじわりじわりでした。

では仮に、米ドルから中国元に移行するとしてどのようなことが起こり、どれくらいの期間がかかるのでしょうか。

以下のような記事がありましたので載せておきます。




元の国際化を一気に進めるかもしれない政策の一つがデジタル人民元構想だ。中国政府は硬貨・紙幣をデジタル通貨にし、すべて電子決済で済ませるシステムを構築しようとしている。デジタル通貨の最大の強みは取引当事者が銀行を介さずに直接取引できる点だ。

 

海外との取引では圧倒的にドル、すなわち米銀行を介する必要があったが、デジタル通貨ではその必要がない。デジタル人民元が登場すれば、ドルに頼っていた決済のかなりの部分が人民元にとって代わる可能性がある。人民元のシェアが一気にドルに並ぶ、あるいは超えるかもしれない。

 

ほかにも中国にはメリットがある。デジタル通貨による取引は細部まで記録が残るため、マネーロンダリング(資金洗浄)や脱税などの摘発が容易になり、収集した情報を使って国民の経済・社会生活を統制しやすくなる。また中国が海外での軍事作戦や情報収集活動をする際にもドルに頼らないので、機密情報が国外に筒抜けにならずに済む。

 

さらに重要な点として、デジタル人民元の普及により中国政府や企業が米国の金融制裁の影響を直接受けなくなる。現在米国は「香港の自由や自治を侵害した個人や団体」のドル資産やドル建て金融取引などを制限している。新疆地区問題でも類似の制裁がとられている。米国は中国に限らず、他国に経済制裁を与える際にドル資産や口座の凍結という手段をとる。だがデジタル人民元によりドル依存がなくなれば、金融制裁もあまり効果がなくなる。米国との対立が深まるほど、より政治的・地政学的な利益という視点から元の国際化が推進され、デジタル人民元が重要な役割を担う。

 

◆◆◆

 

ではデジタル人民元の登場で、人民元はドル並みあるいはそれ以上の地位を築くことができるのか。

 

ドルの強みは、利便性が高く層の厚い金融市場が存在すること、発行国の米国が大国として信認されていること、米国および金融市場全般に高い透明性が確保されていることなどだ。ある国が経済危機に陥った際に透明性を確保しながら、米国一国の政治的・経済的利益のみにとらわれず、世界や地域経済の安定のために公共財としてのドルを提供することも覇権通貨の発行国として重要な役割だ。

 

最近の米国一国主義により国際協力のけん引者としての地位は揺らぐが、ドルの覇権通貨としての地位は揺るぎない。近年米国とのデカップリングにより、中国はより自国利益の追求を鮮明にし、人権問題や領土問題などで政治的自主性を強めてきた。その中で米国経済、特にドルに頼らない経済を構築するため人民元の国際化を推進している。

 

だが香港問題や新疆問題でも明らかになったように中国の覇権国家としての行動が国際社会とのあつれきを生んでいる。そのたびに中国が世界経済安定のために貢献できる覇権国家なのか、そしてその通貨は世界の公共財になりうるのか、世界は常に問うている。

                        (独立行政法人経済産業研究所)

 

 

国際金融史 (新・国際金融テキスト)

国際金融史 (新・国際金融テキスト)

  • 作者:上川 孝夫
  • 発売日: 2007/03/03
  • メディア: 単行本