『中国と戦う時が来た日本』(渡邉哲也、2021)
このように書いています。
日本の日米の経済安全保障で、中国ビジネスは崩壊へ!
楽天、LINE、ユニクロ、無印良品、パナソニック…
中国と提携する企業に迫る致命的リスク、
「アメリカ2021年 戦略的競争法」がもたらす衝撃や秒読み段階に入った韓国の離反と尖閣・台湾危機など、
急速に進展する日本の脱中国と対立激化の影響を気鋭のエコノミストが解説!
<以下一部抜粋・要約>
バイデン政権でさらに燃え上がる中国の人権問題
トランプ政権は2021年1月、政権交代間際に中国のウイグル弾圧をジェノサイドに認定したが、バイデン政権でもこの認識は変わっていない。
中国ではスカイネット、というAIを駆使した監視システムにより、人民の行動を監視している。
2019年末時点で、中国全土には約2億台の監視カメラが設置されていたが、2020年末には6億台を超えたともいわれる。
特にウイグルではこうした監視カメラにより顔認証が行われ、会話までが記録されて、誰が、いつ、どこで、どんな会話をしたかという事まで見張られている。
もちろん、スマートフォンや携帯電話の通信内容も全て記録される。
そしてこれらの情報をAIによって分析し、中国政府に不都合な人物だと認定された場合、強制収容所に送られることになる。
中国のAI ・先端技術の企業については、今後、アメリカだけでなくヨーロッパからも制裁がかけられる可能性が高い。
民間、外資企業まで完全支配に乗り出した中国共産党
アリババグループのように、eコマースから決済まですべてを一社で解決する仕組みは、便利であるとともに他者に対して高い優位性を持つことになる。
中国の場合、共産主義を標榜しており、政治と経済が一体となっている。
そして、中国共産党は巨大なコングロマリットであり、政治権力を有する唯一の財閥でもあるわけだ。
そのような存在にとって、アリババのような巨大企業は敵になりかねない。
さらにいえば、共産党以上の情報も握っている。
だから、中国当局はアリババの解体を決意したのだろう。
中国当局はデジタル人民元の普及のために、アリババグループやアントグループのプラットフォーム利用を目論んでおり、同社への支配力を強めている背景にも、それが関係しているとみられている。
これは、テンセントにもいえることだ。
そして、問題は、そのような中国企業が日本でも活動していることだ。
現在は民間企業でも、いずれ中国政府によって国有化されたり、完全な支配下に置かれるといった可能性もある。
そうなれば、日本人の情報が中国政府に握られてしまうことになりかねない。
前に述べたように、中国の憲法条文では、「国家は中国共産党の指導を仰ぐ」と明記してあり、法律より中国共産党の方が上位なのだ。
「CIPS」と「デジタル人民元」を仕掛ける中国の狙い
現在のドル基軸体制では、ほとんどの海外送金がSWIFT(国際銀行間通信協会)
という決済システムを通じて決済されている。
中国が基軸体制を崩すには、このSWIFT以外の国際決済の仕組みが必要である。
そのため2015年、中国人民銀行が人民元の国際銀行間決済システム「CIPS」を導入した。
中国政府は人民元建ての決済においてCIPSの利用を取引相手国に求めている。
そして、これに平行する動きが、デジタル人民元という「現物無き通貨」ということになる。
トランプ前大統領が、2020年8月にアメリカ企業がウィーチャットを運営する、テンセントと取引することを禁止し、さらに2021年1月にはアリペイやウィーチャットペイなど8つの中国系決済アプリとの取引を禁止する大統領令に署名した理由も、中国当局による電子決済システムへの介入と情報漏洩を警戒してることだといわれている。
そして、インドが中国製アプリを利用禁止にした理由も同様である。
巨大なパンドラの箱が開くとき
前述したように、アメリカを中心に、世界中で新型コロナに関する経済対策として金融緩和が行われてきた。
そして、その資金の多くが株式市場に流れたため、パンデミックで実体経済が落ち込んでいるにもかかわらず、アメリカでは株価が史上最高値を更新し、日本でもバブル崩壊後の最高値を更新するなど、異常な状態が続いてきた。
明らかに株式バブルが発生していたわけだが、バブルの終焉が近づくと、前述のように詐欺まがいの経済事件が発覚することが多い。
そして、まだ開けていない巨大なパンドラの箱が、世界には1つある。
それが中国だ。
その実態が明らかになったとき、世界は大混乱に陥ることになる。
尖閣諸島、台湾有事に備えよ
中国が「核心的利益」(妥協の余地のない国益)としている、台湾統一や尖閣諸島進行を強行する可能性が高まっている。
香港国家安全維持法法を施行し、香港から自治権を奪ったのもその一環とみられている。
「法」の概念が世界と違う中国
共産党は憲法に縛られない。
憲法によって縛られるのはあくまでも統治される側、つまり民衆側であるという認識だ。
中国では、法律は強いものが弱いものを縛るものなのだ。
一方、西欧において法律とは、例えばイギリスの不文憲法の基本となっているマグナ・カルタ(大憲章)や権利章典のように、国王の権限を制限し、国民の権利を保障する「契約」という概念だ。
アメリカの憲法が、このイギリスの権利章典をもとに市民の基本的人権を規定している。
このように西欧における法とは、支配者を縛り、市民の権利を守るものなのだ。
中国の伝統的な考え方に「中華思想」がある。
これは、中華の地は優れた文明を持つ世界の中心であるのに対して、その周辺国は文明の劣った夷狄(野蛮人)だとする世界秩序観である。
一方で中国は、アヘン戦争以来、西欧列強に支配されてきたという“ルサンチマン”を抱えている。
中華の地が夷狄によって支配されてしまったという屈辱である。
ちなみに、1000年近く中国の属国であり、自ら小中華を任じてきた韓国も中華思想を持ち、法に対する考え方が中国に近い。
おわりに
本書で述べてきたように、これまで中国に対して強い姿勢に出ず、腰が引けていた日本も、「新たな冷戦」の戦列に加わることになる。
そしてそれは、「アメリカにくっついて仕方なく」というものではなく、対中包囲網の主軸としての役割を担うことが期待されている。
これは独裁国家と民主主義国家のどちらが強く、統治システムとしてうまく機能するかを問うことにもつながる。
ただしそうなれば、憲法改正の議論も出てくるだろう。
私(チキハ)の感想です。
私が一番驚いたのは、中国の監視社会がここまで全体的なものだということです。
2021年の中国の人口は14億人です。それに対して6億の監視カメラって。
もう一つ印象に残ったのは、中国の民間企業のサービスが、共産党に利用される可能性があるということです。
余談ですが、iPadで「いてき」を打つと「夷狄」がすぐに出るのに、ソニーのPCやAndroidのスマホでは出てこないのはなぜですか。
以前中華製のタブレットを使ったときに、中国寄りの変換に新鮮に驚いたのですが、iPadでは「いてき」で初めて気になりました。
わたしは違和感を感じています。
無知なので、見当外れや勘違いなのかも知れません。
yahooニュースによると、中国共産党の党員数は約9600万人(2021年6月現在)です。
人口(約14億人)で割ると、中国人の約15人に1人という計算です。
党員になる理由は、ステータスであったり、出世のためだとか。
中国人が思う共産党員は日本人が思うような怖い印象ではないようです。
習近平は、言われるほど争いを起こそうとはしていないなどの話も聞きます(法輪功などへ迫害を行った江沢民派と違う)。
注意深く見ていきたいと思いました。
また中国には、人権の為に声を上げている人たちがいます。
中国が一枚岩ではないことを念頭に置いておきたいです。