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コロナ後の日本経済【須田慎一郎】

『コロナ後の日本経済』(須田慎一郎、2020)

コロナ後の世界はコロナ前とは違うでしょう。

これまでも日本は構造改革を先延ばししてきました。

問題がコロナによってあらわになってきています。

著者は変革のチャンスだと言います。

大きく変革をとげることができるのでしょうか。

<以下一部抜粋・要約>

 

はじめに

私たちが今、直面しているコロナショックは、第二の世界大恐慌にもつながりかねないものなのだ。

 

第2章 深刻化する負のスパイラル

膨れ上がる地方銀行の与信コスト(貸倒引当金)

地域銀行は地方経済の担い手であり、主に地元の中小企業に資金を貸し付けることで利益を得ている。

しかし、企業が返済できなくなれば不良債権が発生する。

金融機関は貸し倒れのリスクを回避するために、貸倒引当金を積み立てて健全経営を維持している。

ここでまず理解してほしいのが、銀行の財政状態を示すバランスシート(貸借対照表)の見方だ。

銀行のバランスシートは一般企業とは異なっている。

銀行にとっての負債はほとんどが「預金」である。

銀行にとって、顧客の預金は「お金を預金者から借りている」ことと同義だからだ。

一方の「資産」は貸出金と株や国債などの有価証券である。

貸出金が返ってこなくなると、銀行が預金を返済できなくなってしまう可能性が生じる。

そうした事態を招かないために、銀行は自己資本(株式や過去の利益の積み立て)を持っている。

仮に貸出金が全額返ってこなくなれば、銀行の経営は一気に悪化する。

だから銀行は貸出先の経営状態をウォッチする。

貸出先の経営が悪化すれば資本を積み立てる。

積み立てた貸倒引当金は「経費」としてカウントされる。これが融資に係る「与信コスト」と呼ばれるものだ。

コロナショック前から与信コストが増大しているところに、さらにコロナショックが重なってくる。

そのため、リーマン・ショックを超える可能性は極めて高い。

 

第3章 新冷戦時代の幕開け

「IoTセキュリティ」を巡る攻防

IoTセキュリティをめぐる国際協調の動きの発端となったのが、2018年に開かれた米国のマイク・ペンス副大統領の演説だ。

少々長くなるが、米国の姿勢を如実に示している箇所を抜粋しよう。

「過去17年間において中国のGDPは9倍に成長した。それは世界第二位となった。その成功の多くはアメリカ人の対中投資に牽引された。そこで中国共産党は、自由かつ公正な貿易とは対照的な政策的武器を行使してきた。そこには関税・総量規制・為替操作・強制的な技術供与・知的財産窃盗、および対外投資に必ず組み込まれる国営企業群などが含まれる。

現在『中国製造2025計画』を通じて、彼ら共産党は世界の最先端産業90%の支配を視野に入れている。そこにはロボティクス・バイオテクノロジー・人工知能が含まれる。21世紀経済の頂点に立つために北京は、わが国の経済優位の基礎であるアメリカの知的財産を、いかなる手段を用いても獲得すべしという指示を、その官僚群及び企業群に出している。

北京は今や多くのアメリカ企業に対して、中国における企業活動の対価としてその企業秘密を手放すよう求めている。北京はまたその創造物に対する所有権を求めて、アメリカ企業の買収を指揮・支援している。中でも重要なのは、中国の安全保障部署がアメリカ技術に対する大規模窃盗の糸を裏で引いていることだ。それには最新兵器の設計図が含まれる。そして盗んだ技術を使い、中国共産党は猛烈な勢いで『農具の刃』を『剣』へと作り替えている」

これを読めばお分かりいただけるように、もう米国は完全に中国を敵対視している。 

 

「モビリティ・カンパニー」として生き残りをかけるトヨタ

日本を代表するトヨタ自動車は、あれだけグローバル展開しているメーカーには珍しく、国内の部品を数多く使い「トヨタイズム」と呼ばれる「組み立て工程の妙」をいかんなく発揮してきた。

そんな日本が誇る自動車メーカーであるトヨタが、2019年元旦の広告で度肝を抜いたことを覚えているだろうか。

単なる自動車メーカーではなく、あらゆる移動手段に関わる「モビリティ・カンパニー」へと生まれ変わる決意表明だったのである。

おそらく自動運転の普及に伴って台頭してくるのは、従来のガソリン車ではなく、電気自動車が本命となるだろう。自動車を動かす心臓部がエンジンからモーターに変わることで、車は「組み立て工程の妙」が発揮できた工業製品から家電製品になるとも指摘されている。

これまで「組み立て工程の妙」が発揮できていた自動車産業が、技術の汎用化が進むことで家電メーカーのように成り下がってしまうかもしれない。

シャープが台湾メーカーの軍門に下ったように、「テレビの二の舞」となる可能性も否定できないだろう。

 

脱・中国化に日本企業はついて行けるか?

問題は、そこからだ。

果たしてトヨタの変貌にどれだけの日本企業がついてこれるだろうか。

新型コロナによって「IoT化」の流れは、これまでの想定以上のテンポで進むことが予想される。

これまで述べてきたように、「IoTセキュリティ問題」に「新型コロナ問題」が重なって、現在、世界規模で「脱・ 中国化」と言えるサプライチェーンの見直し機運が高まっている。

まさにそれこそが新型コロナによってあぶり出された新たな構図である。

「IoT」と「新型コロナ」に代表されるセキュリティをめぐって、米国は明らかに「脱・中国化」を推し進めようとしている。

はっきり言えば、米国にとって不都合なものは全て排除していくというルールを確立しようとしている。

そうすると、米国の都合に合致しない日本製品が排除される可能性も出てくるだろう。

つまり、日本企業は右に行っても左に行っても“地獄”という状況に見舞われるかもしれない。

果たして日本は、そして世界は、「新冷戦」の時代にどう振る舞うのか。それが突き付けられている。

 

第4章 コロナと共存する社会へ

「コロナ後」の日本経済を考えるための2つのポイント

国境をまたぐ渡航制限が解除されない中、ウィルスの発生源である中国では、いち早く収束に向かわせたことから、ロックダウンによる抑圧からの解放に伴う「報復」的な消費行動を意味する「リベンジ旅行」の機運が高まっている。

これは「観光立国」を目指し、外国人観光客の獲得に躍起になっていた日本にとっても、経済を回す上では歓迎したい動きに違いない。

そこで考えなくてはならないポイントは大きく2つある。1つは、日本経済再生のために全く新しいことを始めるのではなく、コロナ前に戻すことを目指すのか。

もう1点は、戻すとしても、感染拡大のリスクをどう押さえ込むのか、である。

日本は世界に先駆けて高齢化が進み、様々な問題が噴出している。

発注元の会社が社会保険料の負担を免れようとして日雇い労働者を使い捨てにしてきたツケが社会保険制度の不備という形で噴出し、年金のみならず生活保護にも向かっている。

さらに国内消費を支えてきた日本人の高齢化による減少を穴埋めしようと、外国人観光客頼みのビジネスモデルでどうにかしのいできたが、新型コロナによって、そのビジネスモデルも崩壊している。

1929年の世界大恐慌なみの最悪の落ち込みが予想されるのであれば、当時を思い返してほしい。

当時から学ばなければいけないのは、社会構造の中で一番の弱者にしわ寄せが一気に押し寄せたことだろう。

農村部はもちろん、都市部の底辺の労働者にまで目を配る。

それはいつの時代も一緒のはずだ。底辺、または底辺に近いところに追い詰められている人たちがどういう状況に置かれ、そこで何をすべきなのか。

“一時しのぎ”ではなく、もっと根本的な対策が求められている。

  

私(チキハ)の感想です。

グローバリズムとしてより賃金の安い地域で商品を作るという構図がありました。

その中心的な役割を果たしていたのが中国です。

この本に書かれていたのはその構図が大きく変わるということです。

アメリカは中国離れを決定的なものに宣言し、各国もその流れの中にいます。

日本はアメリカを唯一の友好国としているゆえにアメリカ側につくようです(安倍前首相の演説より)。

中国と深くつながりを持っていた日本の企業や政治家などは、これからどういった身の振り方をしていくのか問われています。

私たちの生活も大きく変化をしてきています。

リモートワークやオンライン学習など今までとてもできないと言っていた人たちまで、やるようになってきています。

週休3日の会社も増えてきているようです。

健康に気を使い、DIY(Do it your self:自分でやってみよう)をする人も増えていると聞きます。

著者は、コロナ前に戻すのか、感染拡大リスクをどうするのかと問いながら、外国人観光客頼みのビジネスモデルも崩壊していると書いています。

大きな変革の時期が来ています。

 

コロナ後の日本経済

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