『 ミャンマーに世界が押し寄せる30の理由 』(松下英樹、2013)
2021年の2月にミャンマーで軍がクーデターを起こしました。
NHK の記事はこのように書いています。
2020年11月の 選挙で 、アウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟が圧勝したが、軍は選挙に不正があったとしてクーデターを起こした。
市民が デモを 繰り返したり、 医療関係者や公務員等が職務を放棄する不服従運動を続けたりして軍の統治に抵抗している。
これに対して軍は、徹底した弾圧を続けている。
この本は2013年に書かれたもので、著者は喜びを持って伝えています。
民主化へ舵を切り、 ミャンマーは「アジアのラスト・フロンティア」として、 脚光を浴びることになったからです。
<以下一部抜粋・要約>
長い鎖国の結果、社会インフラは50年前のまま
発電所も製鉄所も電話の交換機も、戦後賠償によって日本の援助で作られたものが、今でもそのまま使われている。
社会主義独裁政治になりきってしまった国民たちは、それらを欲しがったり、新しいものにチャレンジしようとする気概もなかった。
遅れた金融システム、オンラインなし、銀行に預金せず
電力や道路などハード面のインフラが不足しているだけではない。
経済活動に不可欠なシステムの未整備はもっと深刻だ。
例えば、ミャンマーには金融制度がない。
信じられないかもしれないが、いまだにどの銀行でも支店間のオンライン化もできておらず、通帳も全て手書きだ。
厳しい報道規制、医療設備制度の欠如
マスメディアやジャーナリズムもまた然り、社会主義時代から軍事政権に至るまで、今回の民主化以前はまさに「暗黒の時代」であった。
情報は厳しく統制され、テレビ、ラジオ、新聞は国営のみ。
記者は捕虜、収監されてしまうので、当たり障りのない記事しか載せることができなかった。
各種インフラの不足しているミャンマーだが、皮肉なことに刑務所の数だけは多い。
受刑者の多くは「政治犯」である。
ミャンマーは豊富な地下資源を持つ「意外と金持ちの国」だ
まだ民主化前のこと、私が不思議でならなかったのは、ヤンゴン市内を走る車の約9割が日本の中古車で、その売価が1000万円以上をしていたことだ。
統計上はアジアで最も貧しい国のはずなのに、中古車の価格がこんなに高いのはなぜ?
特に、ミャンマー人はトヨタ車が大好きだ。道路事情が悪いから丈夫で長持ちする車が人気だというのはわかるが、それ以上に、ミャンマー人は見えっ張りなので、とにかくトヨタが好きなのだと人から教えられて唖然とした記憶がある。
では、それを購入する富裕層の財力はどこから来るのか。
その財源は、この国が持っている底知れない地下資源にある。
ミャンマーの軍事政権が四半世紀生きながらえたのも、地下資源、特に天然ガスのお陰だ。
ミャンマー政府は豊富に採れる天然ガスを主にタイや中国に売って、軍人や公務員の給料を捻出してきたといわれている。
宝石もまた然り。
ヒスイ、ルビー、サファイア等の宝石は、世界一の産出国だ。
麻生副総理の日本人墓地訪問でわかる日本とミャンマーの太い「絆」
歴史上、日本とミャンマーの間には太い「絆」がある。
長く続いたイギリスの植民地支配からミャンマーが脱出できたのは、第二次大戦中の日本軍の支援があったからだった。
建国の父・アウンサン将軍を始め、後に独立後のミャンマーのリーダーとなった「30人の志士(イギリス植民地時代の1940年から日本軍の支援を受けて軍事訓練を行い、ビルマ独立義勇軍を組織した軍人たち)」は、そのことを長く恩義に感じていたという。
史実としては、彼らは日本軍のインドシナ攻略の尖兵として利用されたに過ぎず、イギリスを追い払うとすぐに日本軍の統治下に置かれてしまったのであるが、彼らの教育係であった特務機関の鈴木啓司をはじめ、規律と礼節を重んじる日本軍人の姿は現在に至るまでミャンマー国軍の手本となっている。
ミャンマーと言えば2度にわたり映画化された小説『ビルマの竪琴』を思い浮かべる人も多いだろう。
戦時中、20万人が帰らぬ人となったとも言われるインパール作戦に従軍し、命からがらなんとか生還した元兵士たちは口々にビルマ人に命を救われたと証言したし、終戦直後の日本において、食糧危機を救ったのはミャンマーから送られた「ビルマ米」だった。
敬虔な上座部仏教徒として生きる人々
輪廻転生を信じるあまり、現世利益には興味がない?
「アジアのラスト・フロンティア」と呼ばれるミャンマーに住む人々は、どんな気質でどんな生活習慣を持っている人たちなのだろうか。
彼らとビジネスを展開していく上では、どんな点に注意しなければならないのだろう。
データから見れば、130もの少数民族からなる典型的な多民族国家だ。
宗教的には、上座部仏教(南方仏教)徒が85%で、国民の大多数を占めている。
ミャンマー人の気質や考え方、生活習慣を考えるとき、この上座部仏教徒であることが最大のポイントだ。
街のシンボルとして聳える黄金に輝く巨大なパゴダや、街角に誰かの寄付で作られた小さな祈祷所(これもまたパゴダなのだが)には、平日でも早朝でも深夜でもそこに集い、お祈りしたり、語らったり、瞑想したりする人々の姿がある。
上座部仏教の最大の特徴は、人は限りない輪廻転生を繰り返すと信じられていることにある。
その生は「苦しみ」だ。
その苦しみの原因は「執着」とされ、一切の欲望を断ち解脱するためには、経典の学習、戒律の厳守、瞑想の修行が最も効果的とされている。
だから、人々は現世に執着しない。
ビジネスマンでも軍人でも、お金を儲けるとぽんと寺院に寄付してしまう。
ビジネスに見る上座部仏教
まず、ミャンマー人は全体的に穏やかな印象だ。
中国人のように他人を押しのけてでも何かしようという「気迫」や「強欲さ」はあまり感じられない。
ビジネスにおいても然り、あまり感情を表に出さないし議論をすることも少ない。
大きな声を出したり、相手を罵ったりすると「あの人の前世は動物だった」と思われてしまうのだ。
勤労意欲には欠ける男たち
そもそも、亜熱帯にある国だから、決して皆が勤勉というわけではない。
女性は畑に出てよく働くが、男は家でごろごろしている人が少なくない。
貧乏に生まれても、決して卑屈にならないのもミャンマーの特徴だ。
なぜなら、輪廻転生を信じているから「来世が良くなれば良い」と潔く諦めることができるからだ。
地方の貧農の家に生まれたら、どんなに頑張っても「出世」は珍しい。
仏教の教えに「親を養う」というものがあり、子が親のために生命を投げ出すのは当たり前とされている。
ミャンマーでは貧しさゆえに子供が売られていることも珍しくない。
ミャンマー人に婚前交渉交渉なし、男女交際は覚悟が必要
ちなみに、蛇足かもしれないが、万が一ミャンマーで独身女性あるいは男性と恋に落ちて手を出したら、即座に結婚を求められると思っていた方がよい。
私(チキハ)の感想です。
以前にもこの本を読んだことがあったのを思い出しました。
証券市場が整い始め一般人にも投資のチャンスがあると聞いたからです。
戦後の日本の株式に賭けた人は何十倍になったことか!
それと同じようなことが起こるはずだ。
んなろー、やったるわい、と目をギラつかせていたのです。
Jiji .com はこう書いています。
ヤンゴン証券取引所は、日本の官民の支援で設立され、日緬(にちめん=日本とミャンマー)合弁の形をとる世界でも珍しい証券取引所だ。
同取引所は2020年3月、これまでミャンマー人に限られていた売買を外国人に開放した。
日本人とわかると人々はとても親切で、そのエピソードも書かれています。
今まで読んだ国の中では仏教徒ということもあり、日本人に近いものがあると感じました。
前回読んだときは、美しい光景のように思った現世に執着しない宗教はしかし、権力者に都合の良いように使われているのではないかと思ってしまいました。