『金が通貨になる』(谷口智彦、2012)
2022年4月ロシアが金本位制復帰というニュースが流れました。
ロシアの通貨ルーブルを、金や、資源を裏付けにした通貨にするというものです。
検討中、だそうですが。
日本や、アメリカでは、通貨の裏付けとなるものは、現物の資産としては、ありません。
それによって、紙幣が、際限なく刷られるようになり、信用が失われているのが現状です。
ウクライナ侵攻によって、ロシアへの制裁が加えられ、ロシアの通貨は暴落しましたが、その後、回復しています。
天然ガスなどの決済をルーブルで行うなど、脱ドルを進めています。
<以下一部抜粋・要約>
アメリカの原則とは何か
ティーパーティー運動の躍進とAPP
APP(アメリカの諸原則プロジェクト)が主張する「アメリカの諸原則」とは何でしょう。
それは「同性婚反対」「中絶反対」、そして「ドルと金のリンク復活」……。
つまり、アメリカにはいくつかこうした確固たる「原則」があるのであって、それを踏み外してはならないという政治的宣伝を繰り広げていたわけです。
考えの根底にあるのは、いずれもアメリカは宗教的・倫理的にしっかりしなければ根腐れを起こす、現に起こしつつあるという、割と切羽詰まった危機感です。
ところでAPPのような組織が登場した背景には、2010年中間選挙におけるティー・パーティー運動の躍進があります。
ティーパーティーは、オバマ政権が導入しようとした国民皆保険制度にいたく刺激を受け、巨大な官僚組織がプライベイトの領域にズカズカ入り込んできたと生理的嫌悪間を覚えて、オバマ大統領反対、大きな政府反対を掲げてあちこちで盛り上がった勢力です。
第3の通貨政策X
アメリカはかつて2度、世界に対する影響力を、通貨体制を変革することによって強化し、あるいは保全しました。
1度目は第二次世界大戦の終局に際してです。
英ポンドを失墜させ、ドルが唯一の世界通貨としての力を得た時でした。
2度目は1971年、時のニクソン大統領が金とドルの交換を停止し、それがきっかけとなって為替を変動相場制に導いた時でした。
以来アメリカは、消費需要の拡大を外から取り入れたキャッシュで賄うことを可能にします。
それは、アメリカにものを売る新興国の成長を起爆させました。
軍拡という巨大な需要の資金繰りが楽々ついたため、共産主義ソ連を倒すことにも成功し、一時アメリカはわが世の春を謳歌できたのでしたが、これを資金面で支えたのが日本であり、英国であった現実は、その後大きく変わります。
登場したのが、中国でした。
アメリカで盛り上がる金本位制復活論
第1、第2に続く、第3の通貨政策Xとは、一体何であり得るか。
この問いから、本書が始まります。
ドルを金と結びつけること。あるいはさらに進んで、ドルそれ自体を自ら否定し、金を世界通貨の玉座に再び押し上げること。
金本位制の復活を持って、第3の切り札にさせようという機運が、アメリカで、かつアメリカでのみ、今盛り上がりを示し始めています。
世界の仕組みを変える大仕事を推進していくだけの政治力、指導力、馬力が、今のアメリカには欠けているというのが、金本位制実現を現実には難しいと考える最大の理由です。
けれどもおそらく、金本位制など平時の順次的移行という穏やかなプロセスで実現する類のものではありません。
世界史的危機においてこそ、またその時にのみ、切れる究極の切り札でしょう。
だとすると、危機のアメリカならやるかもしれない、世界を引っ張る馬鹿力を出すかもしれないという可能性を、あらかじめ排除しておかなくてはならない理由もないわけです。
ブレトン・ウッズもニクソン・ショックも兆候があった
私は以前、『通貨燃ゆーー円・元・ドル・ユーロの同時代史』という本を書いたとき、2つのことに呆れたり、驚いたりしました。
1つは、日本が真珠湾奇襲の挙に出てアメリカ、イギリス相手の戦争を始め、初戦の勝利に沸き立っていた折も折、真珠湾から1週間後の日曜日に、アメリカ財務省では「戦後」国際経済体制の検討を始めていたという事実です。
アメリカは後ケインズとの理論闘争を力でねじ伏せて、ブレトン・ウッズというニューハンプシャー州のリゾート地で、戦後体制の骨組みを確立させます。
金と交換できる資格をドルだけに与え、他の通貨とドルの関係を固定させるという戦後のいわゆる金ドル本位制始め、戦後経済の土台がここでできたのですが、それが、1944年7月のこと、終戦まで1年余り残した時期の話です。
次に1971年の8月16日、「ニクソン・ショック」に日本中は衝撃を受けます。
リチャード・ニクソン大統領が全米向け放送に現れて、金とドルの交換を直ちに停止すると発表したのでした。
中央政府に対する不信・不満と一種の終末観
ここから見てとれるのは、まず中央政府に対する州政府の根深い不信感です。
そしてもう一つ、指摘しておきたいのは一種の終末観です。
聖書で言う「終末」が来たときの自己防衛手段は、紙切れではなく金であるという考え方です。
金本位制論者とキリスト教原理主義者
金を通貨にする動きを見せている地域を見ると、ティーパーティー運動が強かった一帯と重なっています。
では、ティーパーティーはどういうところで根強いかといえば、キリスト教原理主義者、つまり聖書に書かれていることがそのまま事実だと思っている、ないし思いたがっている人たちが多く住む地域です。
大御所たちの少数意見
それではロン・ポールとルイス・ レーアマンの2人が、金委員会報告の後に少数意見として出版し、近年になって改めて読まれ始めている本から、彼ら独特の論理構成を見ておきたいと思います。
憲法の規定で、金のみを貨幣とせよ、度量衡を定めよ、という2つが同じ条文に入っている点に注目した書物として前章で言及したのはこの本でした。
(以下、訳文)マネーの単位を定義するときは、実体のある価値、例えば貴金属などの形で精密に決めなくてはならない。
それでこそ、通貨の制度は健全な道徳的原則に乗っ取るものとなる。
政府の行政命令だけで金の地位を得る場合、その金とは恣意的なもの、そもそも定義不能なもので、失敗に終わる運命にある。
インフレとは、通貨と信用貸しが増えるとき起きる。
しかしそれが起きるのは、金との交換ができないペーパー・マネーのシステムを採用している場合だけだ。
ティーパーティーの論拠と酷似
既にお気づきの通り、ここに見られるロジックのいくつか、例えば政府は本質的に悪であり、神が託した自然法にいつも立ち返るべきであって、法や規制で個人の暮らしや経済に介入すべきでないとする信念は、他でもありません、ティーパーティー運動として2008年中間選挙に忽然と現れ、大影響を及ぼした潮流と、ぴったり重なるのです。
事実、ロン・ポールは中央銀行(連邦準備銀行)廃絶を一貫して唱えており、政府介入を徹底して忌避する点で筋金入りです。
金本位制への移行手順
この次、金とドルに何らかの関係を作り直す際、当然ながらいくらで金を評価し直すかが問題になるでしょう。
1 リュエフのプラン
現場のもとで国際通貨制度の 漸進的崩壊を徹底的に食い止めるには、ただ1つの解決策を即座に実行する以外に有効確実な方法は無い。
それは現金通貨を保有する国に対し、これをいつでも必要とあれば、永久不変の比率で一定量の金と交換することができるという保証を与えることである。
2 レーアマンのプラン
1 アメリカの連邦準備制度理事会は、大統領からの要請を受けて、主要10カ国あたりと協議に入る。
そこで、それら国々の相関の貿易が均衡するよう、為替レートを購買力平価に照らして釣り合うポイントで安定させる。
すなわち、一般的な貿易財の単位労働コストに見合うように決める。
2 アメリカ大統領は、国際通貨会議での合意を踏まえて、3年から4年先の決められた日に金本位制を始めるようG10諸国に促す。
3 金本位制で準備通貨(基軸通貨)は無用になる。
世界の公的ドル準備は1つにまとめて金に交換、償却する。
私(チキハ)の感想です。
日本は、第二次世界大戦後の世界の通貨制度(ドル基軸)の話し合いの場には、いませんでした。
そして、ドル金兌換を廃止するときも、突然でした。
次に起こる通貨制度の変更も、私たちは突然知るのかもしれません。
その兆候は、今起こりつつあるようです。
現在、アメリカは金利を上げているのに、日本は、金利を上げていないので円が安くなっています。
いずれ、日本も金利をあげるようになり、円は高くなると思われます。
それとは別の理由で円が高くなる可能性があります。
アメリカ救済のために、各国が協調してドルを安くする、ということです。
各国協調は、私たちの知らないうちに行われているのかも知れません。
こちらの動画の中では、違った理由で、円が安くなっていると説明しています。
それは、資源(金)がないからです。
経済が大きく変わっていきそうです。
シン・グレートリセット 苫米地英人
金本位制が蘇る シン・グレートリセットが進行中 Dr.苫米地 #円安 2022年4月4日 - YouTube