『バチカン株式会社』(ジャンルイージ・ルッツィ、監訳竹下・ルッジリ・アンナ、訳花木知子・鈴木真由美)
金融市場を動かす神の汚れた手<きゃー>
<以下一部抜粋・要約>
解説
本書『バチカン株式会社』は、2009年5月にイタリアで刊行された。
発売から4ヶ月が過ぎた同年9月12日、イタリアで最大部数を誇る月刊誌『ラ・レブッブリカ』のベストセラー第1位に輝いた。
筆者のジャンルイージ・ルッツィは、豊富な取材経験を持つベテラン記者である。彼はジャーナリズム的な手法を用いて、これまで明らかになることのなかった「宗教活動協会」(バチカン銀行)にかかわる秘密文書を紹介した。
教皇庁とバチカン銀行がひた隠しにしてきた、不正取引にかんする詳細かつ克明な記録を含んだその内容は、あまりにも衝撃的なものであった。
バチカン銀行は、貧しきものや病を患う者たちを救い、天に召された者たちに祈りを捧げるために存在しているのではなかったか。
本書で初めて明かされた数々の事実について、バチカンは一体どう説明するのだろうか。
刊行から一年以上が経ったが、バチカンはルッツィが提示したいくつもの疑問に何か答えたのか。
私の知る限りでは、驚くべきことにバチカンは何も答えていない。
完全に無視されている。
教皇の金庫、・教皇の株式会社
教皇ヨハネ・パウロ2世が導入したバチカン市国新基本法によると、「教皇はバチカン市国の主権者であり、十全なる立法権、行政権、司法権を有する」。
教皇がバチカン市国の主権者であるということはつまり、世界中に広がるカトリック教会の最高権威者であり、それらが保有する財産や教区協会に対して、際限のない権力を有していることになる。
(カトリックの総本山である)サン・ピエトロ大聖堂から、隔絶した山頂の修道院にいたるまで、その全てが教皇の統治下にある、ということだ。
教皇が治める国家は、バチカン市国の国境を越えてはるか遠くまで広がっているのである。
積極的に伝導にかかわっているものは400万人を超える。
その役職は様々で、司教、司祭、修道士と修道女、常任の助祭、伝道にたずさわる非聖職者、そして教理問答の教師が250万人いる。
いつの時代にも、この神権体制はーー形式の上で言えばーー選挙で選ばれた長をいただく絶対君主制だと考えられてきた。
だが実際には、教皇は君主というよりむしろ「精神的指導者」の色合いが強い。
つまり教皇は、世界各地に散らばる10億人のカトリック信者を導く存在なのだ。
10億人と言えば、世界人口の17%を超える割合である。
非公開とされる教皇個人の資金は、カトリック教会の財政にまつわる多くの謎の1つである。
慈善事業や施しのために、教皇が自身の裁量で使うことのできる資金の存在については、意外にもよく知られている。
しかし、その資金が何に由来するのか、
またどれほどの量があるのかは、噂話として語られるばかりで、真相はいつの時代にも明らかになったことはない。
バチカンが提供するデータは非連続的で、明らかな部分とそうでない部分とが入り混じることになる。
バチカン銀行の地下金庫に一体どれほどの紙幣があるのかは公表しないのだ。
バチカン銀行については「バチカン市国の行政機関には属しておらず、教皇に直轄する機関である」とされている。
頭取アンジェロ・カロイヤが1998年に説明しているように、「バチカン銀行は教皇さまに直属する機関であり、その収益は毎年教皇さまにおわたししている」のだという。
世界規模の銀行を夢見て
バチカン銀行が目指したのは、バチカンを頂点とする地球上で唯一の神権体制のための、自前の銀行をつくる、という目標だった。
高位聖職者たちの陰謀
第一部ではダルドッツィ師の秘密資料をもとに捜査を迫ってきた。
第二部では別の捜査について取り上げていきたい。
第二部で扱う捜査は未公開の新証言によって大きく進展し、そのおかげで世界における裏工作や闇の金融取引が浮かび上がった。
政治家やマフィア名義の銀行口座の存在も、白日のもとにさらされた。
それらの口座を行き来したカネの1部はマフィアの大物トト・リイナやベルナルド・プロヴェンツァーノの懐に収まり、また別の1部は中道の新党を結成する計画に資金を提供するために使われた。
この新党結成の動きは、キリスト教民主党の崩壊後、カトリック教会の政治的なよりどころとなり得る勢力をつくる試みにほかならなかった。
私(チキハ)の感想です。
解説の中に書かれていたのですが、「イタリア人カトリック教徒の割合は、以前の97%から95.88%へと、これまで見たことがないほどの低下を示している」。
私、何度も見直しましたけど数字に間違いはありません。
調べてみました。
カトリックとはキリスト教の最大教派です。
バチカンとは、2つの意味を持ちます。
1つはカトリック教会の総本山の総称です。
もう1つは、カトリック教会総本山のある国家の名称です。
イタリアのローマ市内にある、都市国家です。
人口615人(ほとんど聖職者)です。
イタリア人にしたら、カトリック教徒であるということは、当たり前なことなのでしょうね。
これくらいの闇が暴かれたくらいでは、揺るがない何かがあるわけです。
この、完全犯罪、もとい絶対君主制は全くの野放しというわけではなく、イタリア司法が介入できたものも中にはありました。
この真実の公開は、中枢にいた人物が、死後資料公開する意志によってされました。
全ての道はローマに通ずとは、フランス詩人の寓話の言葉ですが、全てカネはローマに通ずとは、誰の言葉だったか、忘れました。
この世は混沌としてます。