『ブラックストーン』 (デヴィッド・キャリー&ジョン・E・モリス、訳、
土方奈美、2011)
この本は 日本では あまり馴染みのないプライベート・エクイティで 世界一の会社の 歴史が書かれています。
この会社の歩みは アメリカの プライベート・エクイティ産業の 歴史そのものです。
〈以下一部抜粋・要約〉
2007年 ブラックストーンが 新規株式公開 (IPO) を行った。
プライベート・エクイティーーー 企業を買収し 数年後に売却して 利益を得ることを生業とする 投資会社 ーーー
が金融業界の 傍流から本流の そのまた本流に変わったという事実を、 ブラックストーンの影響力が あまりに大きく 、
その将来性も極めて有望だった ことから 中国政府が 即座に株式の10%を買いたいと 打診してきたほどだ。
あとがきより
プライベート・エクイティについて よく指摘される誤解の一つに 彼らは招かれざる乗っ取り屋であるというものがある 。
確かに かつての プライベート・エクイティは 乗っ取り屋と同じジャンク債という 資金調達手段を使っていたことから、
両者は同一視されがちだが 本質的に全く別物であると著者は説く。
1990年代の日本に、 アメリカのような プライベート ・エクイティ 産業 が存在していたら、何が起きていただろうかーーー。
本書を読むとこう思わずにはいられない。
バブル崩壊で 痛手を負った 金融機関に素早く出資し 、不良債権処理に大ナタを振るったかもしれない。
競争力が 低下したゾンビ企業を買収し、 人員削減や 事業売却、 他社との合併などを断行
し 回復の道筋を整えたかもしれない。
そして日本経済は 「失われた10年」に陥ることさえなく、 成長力を取り戻したかもしれないーーー。
プライベートエクイティは その膨大な資金力によって 第二の資本市場とも言うべき 役割も果たすようになった。
2000年代初頭の ネットバブル崩壊後や 08年から09年にかけての世界金融危機によって アメリカの資本市場が底にあった時期に、
プライベートエクイティは 数十億ドルを投資した。
これは売り手企業にとっては 不況を乗り切るための資金となり、 株価の暴落に歯止めをかける一助となった。
著者らの言葉を借りれば「 プライベート・エクイティは資本主義の 主流派が放棄していた 役割を代わり担った」 のである。
日本企業も、買収ファンドと聞いただけで、 とんでもないならず者が 行ってきたとばかりに門戸を閉ざす姿勢はそろそろ改めるべきではないだろうか。
日本でも 1990年代後半に 和製バイアウト専門ファンドが登場し、 一定の役割を果たしてきた。
だが日本の経済規模を考えれば その存在感はあまりに小さい。
最大の原因は プライベート・エクイティ産業に 人材がいないことでも ファンド資金が集まらないことでもない。
企業の経営陣、 もしくはその親会社の経営陣が 、
他の経営主体に委ねた方が 潜在力を開花させられるような 会社を 抱え込んで 手放さないことだといわれる。
本書が 日本の産業界において プライベート・エクイティの活用という選択肢への 関心を高める一助 となれば、 訳者として 望外の喜びである。
- 作者: デビッド・キャリー ジョン・E・モリス,土方奈美
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2011/12/09
- メディア: 単行本
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