『新L型経済』(富山和彦、田原宗一郎、2021)
〈以下一部抜粋・要約〉
はじめにーー日本再生の鍵は、現場にある
地方創生の鍵は、地方「都市」
僕はこれまで地方に仕事がないから人口が増えないと思ってきた。
仕事を作ることが先で、人が集まるのは後だと考えてきた。
だが、富山さんは問題の本質は逆だという。
人口が黙っていても勝手に増えていくのに、田中の基盤である新潟、そして日本海側には仕事がなかった。
全国の農村にも仕事がなかった。
だから、都市に人口が集中していく。
都市は公害という問題を抱えながらも、しかし経済的には大いに発展していった。
取り残されるのは、地方ばかりだ。
だから田中は公共事業という形で仕事を作り、高速道路と新幹線、そして空港を作り、陸と空から日本中がつながるという構想を打ち出した。
さらに電子力発電や、大企業の規模の大きい工場を地方に誘致することで、地元に人が残れるシステムを作り出した。
要するに、産業と交通網を作ることで、都市にばかり発展が集中しないようにしようとした。
これは人口が増えている時代には最適な政策だったと言える。
でも、今は人口減少の時代だ。
そのために大事なのが、地方創生で議論されがちな限界集落ではなく、30万人規模の地方都市だと富山さんは言う。
都市に人が集まっていれば、サービス産業を中心に仕事が生まれ、地方はもう一度活性化していく道が見えてくる。
まず、30万人都市を再生させよ
日本型企業の代表格だったグローバル市場で戦う企業、G型企業と呼んでいるものですが、そうした企業が今後大きな成長することは難しいでしょう。
特に国内で大きなGDPや大量の中産階級雇用を産むという意味では。
そこで目を向けるべきは、残りのGDPの7割ーー人材で見れば、8割ーーの世界です。
グローバルではなく、ローカルで商売をしている、私がL型企業雲と呼んでいる小売、卸売、飲食、宿泊、エンターテイメント、地域金融、物流、運輸、建築、それに医療や介護、農林水産業です。
GAFAのような企業が日本から生まれても日本経済全体を回復させることはできないんです。
福岡市くらいの都市だと、もともと全く問題ありません。
福岡は大都市で、東京よりも施設が集中していて、野球チームもあるし、生活費は安いし、通勤も楽だし、食べ物もおいしいし、遊ぶ場所にも事欠かないし、エンターテイメントまでついてきます。
問題は福岡の周辺の都市です。
中核都市にはシャッター街も増えてきて、空き家になりかかっているので、みんな共倒れしかねない問題を抱えている。
そのため、人口をもう一度、中核都市に集めてくるという都市政策を、今度は地方でやらないといけないんです。
私の主張は、最初は行政がとにかくお金を使って構わないから、中核都市の再開発を行わないといけないというものです。
高齢者施設、介護施設もむしろ中核都市のど真ん中に作って良い。
L型産業の多くはサービス業ですから、人口が集まれば自然と生まれてくるんです。
あるいは、再生してくるんです。
角栄が打ち出したのは、都市改造と地方開発を同時に進めることだった。
「狭い国土、乏しい資源、膨大な人口というわが国の宿命を逆利用して、均衡のとれた国土総合開発計画が、まず最初に描かれなければならない」というのが、田中角栄という政治家の根幹だった。
角栄は均衡を重んじたからこそ、地方、特に裏日本に道路を通すことが大事だと考えていた。
ただ、もはやそうした時代ではなく、選択と集中をしなければならなくなっている。
地方の赤字企業は、都市の人材で回復する
私たちはまず経営のプロフェッショナルです。
これまでお話をしてきたように、経済をわかっている人材は地方に少ないんですね。
東京の不幸は、世界的な都市であるがためにグローバルな極めて厳しい競争になってしまったことです。
正直、みんなが熾烈な競争に生きて勝ち抜けということになっていると、世界が相手ですから、世界ランキングで上位に行ける人材でないと戦えず、対価を得られない。
こうしたグローバルな出世競争を多くの人に求めるのは無理な話です。
こうした人材が仮に地方に行ったとしましょう。
本人がつまらないプライドを捨て、謙虚に本気で頑張れば、もうピカピカの素晴らしい人たちだと受け止められますよ。
人材マッチングには、コンサルティングも不可欠
これは一言で言えば、30代から50代前半位までの大都市部のサラリーマンの人を地方の中堅中小企業にマッチングさせるサービスです。
経営者紹介マッチングだと思ってください。
これからデジタル化を推し進めることで、最大の果実を享受できるのは、G型企業ではなく、L型企業です。
L型事業では、寡占が経済メリットになる
富山さんは事業再編が大事だと言った。
そのためには中小、零細企業がたくさんあるのはダメで、ある程度、地域の企業再編が必要だという。
イメージでいうと、特定の地域で、1から5社程度の力のある企業に収れんするというイメージ。
緩やかな寡占モデルですね。
そして競争政策的には前にも触れたように、公正取引委員会は域内シェアよりもイノベーション競争の促進に注力する。
業種の壁、企業の壁を越えて事業を統合していくことができれば、過疎地域である程度の社員を抱えていても、持続可能な経営が現実的になります。
おわりに
JPiX(日本共創プラットフォーム)始動へ
JPiXは地域の企業への出資や事業の買収を行ってCXDX(デジタルの力を利用して企業の競争力を強化していく*チキハ)を進める投資・経営事業会社だが、ローカル経済圏の企業の多くが地域の社会インフラを恒久的に担う事業であり、またCXDX、労働生産性の向上には息の長い経営努力が必要な事業特性の産業が多い。
私たちの理念を共有してくれる金融機関や事業会社に出資者として参画してもらい、一緒に民間主導の持続性のある地方創生を実現していく態勢を作っていく方法を選択した。
大志としては、JPiXが実績を積み上げることが地方創生のロールモデルとなって、民間主導の国民経済運動に拡大していくことを目指したい。
私(チキハ)の感想です。
富山和彦さんは、東大法学部卒、スタンフォード大学経営学修士、ボストンコンサルティンググループ、コーポレイトディレクション代表取締役を経て、産業再生機構CEOに就任、カネボウなどを再建。
ここに書いてあることを読んでいても、理屈が通っていて、分かりやすい。
問題を提議する人はいても、解決策のビジョンがない人がほとんどだが、富山さんは違った。
経済学の学者じゃない人の経済は、実践的だ。
私は従業員50人くらいの食品工場で働いているが、手先を起用に使える労働者はいても、計画を立てシステム化する人材がいないとつくづく思っている。
ここに書かれているように、地方の親族経営は、競争力が弱い。
保育園、高齢者介護施設、たしかに経営のプロが何社かを統合させれば、設備や備品など無駄を省いて従業員の待遇もよくなるかもしれない。
一従業員の私には、出来ることは少ないけれども、こういった考えに触れることは向上心に影響する。
